都市の喧噪から解き放たれたいと木々が鬱蒼と茂った斜面の土地を購入。地形を利用した5層のスキップフロアで内と外を心地よくつなげる。
text_ Aki Miyashita photograph_ Takashi Daibo
HKH
(兵庫県西宮市)
- 設計
- アトリエ・フィッシュ
- 住人データ
- 夫(40歳)会社員、妻(43歳)会社員、長男(10歳)、次男(3歳)
道路から見上げる階段を3階分ほど上ったところに、Hさんご家族の住まいはある。今となっては駅まですぐの好立地だが、家を建てる前は急斜面の雑木林だった。
近所の方には『よくこんな所に!』と驚かれましたね。人気の高い住宅地で、海まで見える眺望と静けさが価格を抑えて手に入るなら、階段は気になりませんでした(ご主人)
東京から転勤してきて沿線にある会社の寮に住み、東京では得難い暮らしやすさに魅せられたという。
この辺りは大阪城の石垣に使われた御影石の採掘場でした。地盤調査で打った杭が抜けなくなるほど頑丈。地盤がしっかりしていれば、Hさんご夫婦は軟弱じゃないアウトドア派ですし、傾斜地でも住みこなせると思いました
そう話すのは設計を手掛けたアトリエ・フィッシュの山下誠一郎さん。家の中は地形に合わせて5つのレベルをもったスキップフロアに。木々の位置や傾斜を細かに調査してプランを決めたという。
斜面を無理やり平らにするのはナンセンス。広い一間にしなくても空間がつながって見えれば広く感じられます。何を見せて何を見せないかも考えながら設計しているので、カーテンがあるのは子ども部屋の小さな窓一つだけです(山下さん)
リビングの東南角に見晴らしの良い窓を設け、テラスは人目を気にせずのびのびと過ごせる木々に包まれた斜面側へ。寝室も静かな斜面側に配置し、洗濯物の干し場は眺めの良い2階南側に。夜景を見ながらここで飲むビールが楽しみで、ご主人は洗濯当番も喜んで引き受けるという。
メンテナンスはできるだけ必要がないように、外壁は経年劣化しにくいセメント板を用いて鎧張りに。地層の御影石は風化するので、家と階段の下はコンクリートを吹き付けて固め、裏手は雑木林のままとした。
ゆっくりお風呂に入り、リビングでくつろいだり、書斎で本を読んだり、いろいろな部屋を渡り歩いて心地よく過ごしています。秋は枯れ葉がどっさり落ちて、雨樋の掃除など、もちろん大変な部分もあります。だけど、年に数回のことなので、楽しみながらできる。暮らしがていねいになっていっているように感じますね。難しい挑戦をした感覚はないのですが、ここができてから斜面にどんどん家が建ったので、パイオニアではあるかもしれません(ご主人)
専門家プロフィール
アトリエ・フィッシュ
1998年設立。写真は代表の山下誠一郎と山下真未。リュックを担いで行ったことのないところへ行ったり、水中メガネを掛けて海に潜ったり、馬で草原を駆け抜けたり、ボートにのって島に渡ったり、気球にのって空から眺めたり、見たことのないモノを見に行き、食べたことのないモノを食べに行き…それが色々な事を考えるヒントになっている。
atelier FISH
- 住所
- 兵庫県神戸市灘区八幡町2・10・11 メゾン六甲302号室
- TEL/FAX
- 078・854・1607
- info@atelierfish.jp
- URL
- www.atelierfish.jp
〈物件名〉HKH〈所在地〉兵庫県西宮市〈居住者構成〉夫婦+子供2人〈用途地域〉第1種低層住居専用地域〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造+鉄筋コンクリート造〈敷地面積〉258.08㎡〈建築面積〉71.92㎡〈床面積〉1階 69.67㎡、2階 41.27㎡、合計 110.94㎡〈建蔽率〉27.87%(許容40%)〈容積率〉42.99%(許容100%)〈設計〉アトリエ・フィッシュ〈施工〉越智工務店〈構造設計〉清貞構造事務所〈設計期間〉10ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2013年
※この記事はLiVES Vol.91に掲載されたものを転載しています。
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