【名前のない場所】
計画地の高畠町は冬は街中でも積雪1m、山間部になると3m
にも達する国内でも屈指の豪雪地帯である。
それゆえ、通常より大きな積雪加重に対応する適切な
構造計画をすることはもちろん、敷地内で降り積もる雪を
いかに処理するかということが1つの大きな課題となった。
ABEでは、リビングの屋根を100角の鉄骨柱で支える陸屋根、
一方、周縁部は木造トラスによる緩勾配の屋根にすることで
積雪に十分耐える構造とし、必要以上の落雪を防ぎ、
それに加え、外構の仕上の選定や塀の配置などにおいても、
除雪の負担を軽減し、周辺敷地に迷惑をかけることが
無いよう計画された。
また、この敷地は水田地帯を新しく造成開発した土地であり
将来的にさらに大規模な宅地造成が進む予定の場所である。
しかし、竣工時の現在でも、この住宅しか建っておらず、
今後周りにどのような大きさの住宅がどのように建つのか
全く予測不可能な環境にあった。このような状況で、
いずれ建つであろう隣家からいかにプライバシーを
確保するか、と同時にいかに開放的な空間を獲得するか
ということがもうひとつの大きな課題となった。
そこでこの住宅では、一日の大半の時間を過ごす
リビングを敷地の中央に配置し、諸室でそれを取り囲む
ことで、リビングのプライベート性を一層高めるような
プランとし、リビングの天井を周縁諸室よりも高くし、
四周にハイサイドライトを設けることで、
常時十分な採光がとれる計画とした。
中庭上空にひらりとテントを被せたようなこのリビングは、
時間の移り変わりによって表情豊かな空間となり、
外部空間的な開放感・爽快感、そして自分たちだけの空を
獲得したような優越感を味わえる。
周縁居室には、バイオリニストであるご主人が、
音楽教室も主宰しているため、レッスン室と録音室が
併設されている。
この居室には独立したアプローチがあり、住宅部分とは
完全に独立して使用することもできるが、リビング間に
ある可動式の界壁を開放することで、音楽室をステージ、
リビングを客席、ロフト部分を2階客席と見立てた
コンサート会場として使用することもできる。
(共同設計:小山光/ atelier ko architects)
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