500m程離れた、平行する幹線道路と線路との間に、矢部の家は位置する。
敷地は相模原の市街地の駅近くにあり、飲食店・事務所ビル等も多いが、
静かな佇まいも残す場所である。
そこに、周囲の景観に挑戦するべく、コンクリートの箱を設計した。
1階部分をコンクリートの壁で囲まれた閉じた空間とし、2・3階の一部を
外に開放する形態をとる。
この住宅は夫婦+子供+母の4人に用意された。
1階にピロティ・中庭・書斎・多目的室、2階に母の個室・ユーティリティ
・テラス、3階に居間・食堂・寝室、そして屋上庭園が配置される。
建物は、中央の階段室が、半層ずれた2つの箱をつなぐ構成となっており、
それらに取り囲まれるように3m×3mの中庭が存在し、これは高さ10m
の吹抜空間となっている。
この吹抜空間が、風・光・水の自然要素を取り込み、2階・3階の半層の
ずれと共に非日常的面白さを与えてくれる。
敷地は22坪と決して広くはなく、予算も厳しかった。
しかし、夢は広がる。
クライアント・施工者の協力も得て、最近のマンションや建売住宅のように、
機能性・合理性だけを求めた住宅にはしたくないという思いで格闘した。
設計に際しては、シンプルな形状がデザイン性を持ち合わすようにした。
この建築を構成する一つ一つのものには、きちんとした寸法を与えて意味を
持たせ、また素材の良さがそのまま出るように考えた。
外部に対しては静かに佇み、内部には人間生活の動きが生ずる。
静と動が共存する建築でありたいと願う。
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