横浜市青葉区にオープンした「有機野菜のセレクトショップ」をコンセプトにした青果店。
卸売市場内に借りた倉庫を拠点として、主に飲食店へ青果卸しを行ってきたが、移転を機に小売スペースを併設し、店舗として構える事となった。
近年、スーパーマーケット等で生産者が可視化された食材を目にする機会が増えたが、それでもポップの中で笑う生産者たちは、いつもどこか遠い世界の人々のようで、消費者である私達との間には大きな溝があるように感じられる。
産地に足を運び、直接セレクトした安心で安全な有機野菜を販売するこの青果店にとって、これは大きな問題のように思えたため、この溝を埋めて生産の場をより近くに感じられる売場を目指す事にした。
溝があると感じられる生産と消費の間には何があるか考えてみると、当然の事だが、そこには物流という段階がある。生産者と消費者は物流によって繋がっている。
この繋いでいる過程(物流)への意識を回復させる事で、生産と消費の間の溝を埋める事ができるのではないかと考えた。
そこで、物流を想起させる荷造りの方法に着目し、売場の設計を行った。
計画は、テナントスペースの中央にプレハブ冷蔵室を置き、それ自体を売り場と倉庫を分ける間仕切りとしている。
売場の主役となる商品棚は、15mmの角材を組み合わせ、荷造り用のポリプロピレンバンドで結束するという方法で構成している。
そのほか、105mmの角材を締め付けて什器として纏めているラッシングベルトや、配管に巻かれたクロスカットテープなど、複数の荷造りの要素を売場内に配置している。
これらの荷造り要素達が売場と生産地の溝を埋め、消費者の意識を生産地まで運ぶ足がかりになればと考えている。