東京の住宅街にあった一軒家は老朽化のため建て替えを余儀なくされていた。60代の兄弟はともに子供たちが独立し、より暮らしをシンプルにしたいという思いが共通したため、元々そこに住む弟夫婦が土地を提供し、二世帯ではあるが、数十年ぶりの兄弟同居となった。つまり、この計画は60代の夫婦の家の減築であり、兄弟の家の合築である。
確保可能な建物ボリュームが小さなものであったため、設計作業は、どれだけ最小限の空間があれば十分なのかを検証することから始まった。仮住まいへの引越しを繰り返すことで、荷物の整理が行われる。本当に必要なものを見つめなおし、生活を見つめなおす良い機会になったと思われる。
設計は、旗竿型、前面道路高低差約4mという敷地の特性を生かし、プライバシーの確保と開放感の両立を重要視した。
1階の弟夫婦世帯は、南側通り庭に対して広く低い開口部によって、隣地からの視線を遮りつつ開放的なリビングをもつ一室空間とした。約45㎡と決して広くない空間を収納壁で仕切り、開口部の高さや天井高さの変化をつけることで実際の広さ以上に広く感じられる空間を作ることに腐心した。
2階には2世帯の共有空間としてアトリエを設けた。陶芸などの趣味にいそしむ空間として、かつ2世帯をつなぐ緩衝帯としての空間である。(現在は犬の部屋になっているが、、、)
2階の残りのスペース約35㎡が兄の世帯である。スキップフロアの居間は朝日が差し込み、空を大きく切り取る出窓が特徴的な空間である。ここに至るまでには、前面道路より28段の階段、14段の屋外階段、3段の居間の階段を上るのである。兄は、その高さの変化を面白いと望んだ。バリアフリーの考え方とは全く逆の住宅であるが、楽しんで暮らせることが何よりも大事なのだと信じ、このような形とした。
この小さな家に時には10人以上の来客があり、食事を振舞うことがあるという。わずか13坪の住宅が、閉塞感なく来客をもてなせるという。単純面積ではない広さを感じ有効利用して頂けていることを嬉しく思っている。
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