60代夫婦は山梨にある妻の実家に帰れば素朴な田舎暮らしを楽しんでいた。東京に家を建てる際には、その味わいを都会においても少しだけ感じたいという思いがあったためか、広大な庭と植生(森)を持つ古民家を隣地とする敷地に自ずと惹かれ、購入した。
私たちはその森に対峙する建物として、「建築ボリュームと余白の空間が敷地いっぱいにうねって展開する、『森を見る家』」を提案した。2階のリビングは不整形な平面に加えて乱勾配の高天井の空間とし、ここに薪ストーブを据え家族の中心空間とした。東側の高いガラススクリーンからは朝日が差し込み、森からの風が通り、都会の喧騒とは違った空気の流れるくつろぎの空間である。
この敷地は南北2面の道路に面し高低差は4mほどあるが、カーポートと宅地に2段に造成され分譲された。敷地いっぱいにうねる建物はカーポート上部も建物離れとして活用し、ブリッジで繋ぐことで、建物内の移動が楽しく変化のある空間を要所に創りこんだ。
山梨の実家で薪を割り、東京で消費する。煤けた薪ストーブの掃除がご主人の日課になっているという。穏やかで活動的な定年後の生活の一例である。
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