■広がる景色を切り取り、引き入れる
敷地は鴻巣山南斜面。濃い緑を背に南西に広がる市街地と油山の山並みを一望する自然と眺望に恵まれた住宅地である。博多湾からの海風は一旦山の緑に浄化され、季節を通して爽やかな空気を運ぶ。敷地より眺める山の端、空の色・・は朝、夕に美しく表情を変える。
この家は、2階をプライベートなスペース、1階は客を迎え、時には作品の展示の場としても使える空間として計画された。
キュービックで銀色の外観は周囲とは際だち自立する。しかし深い緑を背景に、刻々と変化する光や緑といった自然を微妙に映し、穏やかに表情を展開する。
内部は窓の位置や大きさによって、それぞれに趣の異なる自然や景色が日々の生活の中、目に入るように図った。特に1Fリビングは限りなく広がる景色を切り取り、引き入れる。快適な居住性を保ちながら内部と外部は一体になる。
茶事にも使える和室には、壁、天井、障子全てにネパール紙が貼りまわされ、柔らかく包まれるような空間に仕上がっている。
この家は四季折々の草花、控えめに置かれた小物、夫人の作品そしてなによりご夫婦の生活そのものに、生き生きと息づいている。主人が当初求められた自らの生活の場を通してデザインの意味を表現し、訪れる人々を楽しませたいという思いはかないつつあるようである。
Photo:新建築社 写真部
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