3世代6人家族の住まいの建て替え。 解体前は、母屋、蚕小屋、倉庫が敷地いっぱいに建てられており、配置やプランの影響で、居間は北向きとなり、寝室も屋根裏にスペースを増設するなど、これから子供が大きくなるのに備え、全体的な改善策が必要な状態に陥っていた。現状の生活では不必要になった蚕小屋や倉庫を解体し、母屋を曳家して改装することも検討したが、家族の要望や、建て替えとのコストバランスも鑑み、建て替えを行なうこととした。
屋根はシンプルなほど美しく機能的である。最も屋根らしいカタチが切妻だと感じている。軒は低く出すことで、機能的に外壁を雨風から守り、心理的にも外と内との中間領域として機能する。
また、家という言葉は、家屋という建物のことを意味するのと同時に、家族や親族のことも意味する。代々の仏壇がある家を設計することが初めてだったということもあり、そのことにもより強く意識が傾いた。少なくとも自分がつくる住宅は、住い手の内面的な心の風景を作り出す場であるよう考えてつくりたいし、その心の風景は家族に共有できるモノであって欲しい。建て替えにより風景が変わること、記憶のことにも考えを巡らせた。
平面をコンパクトにすること、屋根勾配なりの気積を絞ることにより、家族の距離感が遠くならないよう、屋根を大きく見せる切妻とすることにより、新たに建て替えた住宅でありながら、以前からこの場所にあったかのような落ち着いた佇まいとなるよう配慮した。抽象的ない意味でも具象的な意味でも、風景を後退させない家として設計した住宅である。