築40年のホテルのエントランス・フロント・ラウンジ・カフェの改修プロジェクト。
ホテルは市街地に建っており、上階の客室からは富士山を望むことができるが、改修エリアはこれといった風景に恵まれてはいない。ただエントランス脇にはプールを囲むような中庭があり、ここはホテルにとってオアシスのような場所に感じた。
今回の計画では、エントランスからはやや遠くに感じられた中庭への連続性を高め、ホテルに入った瞬間から異空間へと誘うような計画とした。
中庭に面する開口を構造上許される限り広げ、中庭に面する空間の天井高を可能な限り高め、ルーバー状の天井意匠を内外に連続させた。それにより、建物奥へと自然光を導くと同時に、山梨の強い日の光を柔らかくもしている。また天井ルーバーの他、床タイルも内外同じ素材とすることで、内部と外部との境界を弱め、空間の特殊性を高めている。
また、このホテルには既存の柱が多い。そのため、それぞれのスペースを新たに壁を設けて区切るのではなく、素材を切り替えていくことで緩やかに空間を分節している。
ホテルに訪れる人にはリピーターも多い。そのため、このホテルを長年見守ってきた中央廊下のシャンデリアを、『記憶』として残すこととした。