奥多摩地域の玄関口、青梅市の多摩川右岸に建つ平屋の個人住宅。
敷地は準工業地域にあり、周辺には小中規模の工場、資材置場、住宅、その合間に畑などが並び、生産の場と生活の場の距離が近しく感じられる。
敷地北面は、多摩川水系の流れが形成した段丘地形による断崖を含む緑地帯。南東西面は隣地や河川を挟みながら道路に面している。あらゆる方向から建物の姿が目に付く事から、全方位に均整の取れた姿を見せるために方形屋根を採用した。
内部は、形態や陰影に重きを置いた抽象度の高い表現を行いながら、要所に木材の質感やディテールを施す事で、モノとしての安定感や安心感を与えている。
南面には土間を配し、客間や第二の居間、そして小規模な商いの場「見世」として多用途に活用される事を想定し、隣接するように団欒の場を中央に大きく据えることで、空間の大らかさを手に入れるだけでなく、商空間としても堪える意匠的強度を持たせた。
奇をてらわない平滑な納まりや懐かしい設えを現代的な意匠に織り交ぜながら、建築に関わる人たちにどこまで「思い出してもらえるか」「面白いと思ってもらえるか」がテーマのひとつとなっていた。
日常使いの職住一体の場、その起点となり得る素形を想い描き、ひとつの点を打つに至った。
これは設計者の自邸です。現在は事務所兼住宅として使っています。
この家を設計するにあたって思い描いたのは、住居でありながら、住居ではない他の用途で使う事のできる大らかさのある空間です。カフェでも本屋でも事務所でも、その何にでもなれるような空間を作り出せば、長く受け継がれて、消費財としての住居を超える存在になれるのではないか?設計しながらそんな事を考えていました。なので住宅としてはシンメトリーや抽象的な表現を取り入れ、幾分象徴的なデザインとなっています。
世の中には家がたくさんありますが、如何にも家らしい家である必要はありません。自分自身の生活を柔軟に捉えてみて下さい。
資料請求にあたっての注意事項