N診療所 2006
この診療所には高齢者の患者さんも多くいらっしゃいます。重い病気ではないけれど通院する必要がある人びとにとっては、通院することを通して、家から出て社会とかかわりをもつという側面もありましょう。であれば、建築に求められるものは、なお一層、診療の機能だけではなく、もっと深く総合的なものでなければなりません。
先生と看護婦さんや事務の方の動線を読み解き、患者さんの動きを単純にしようと試みました。カルテや試験体などのものの動きも総合的に考えると、中心にコアのある計画がもっともよいことがわかりました。そこには、受付と薬局、便所やレントゲン室を含みます。コアを廻り往き止まりがないので、診療のさまざまな場面で、柔軟な対応を可能にします。加えて、空間にひろがりができました。
この診療所では、あまり重い医療行為は行われないので、努めて明るく優しい、言ってみれば家のような親しみのもてるデザインとしました。外部の木仕上げは、当時、一般にこのような住宅地では認めらませんでした。建築基準法をよく読み解き行政と折衝して実現しました。
入り口の庇は高さを低く抑え、身体のスケールに近づけることで人びとを招くようにしました。内部は、濃い茶色の木の床に、白い自然素材の塗り壁の仕上げとしました。天窓や、水平に連続した窓からの光や、ガラスの間仕切りを透過する光が、柔らかく室内に拡散します。
手摺の大きさや材質、配置の仕方や、受付のカウンターの下の物置など、細かいところに気を配りました。壁の角には、45°に削った木をはめ込んで、壁が壊れにくいよう、また扉の枠も、手の触れる部分には少し大きめの木枠を用いて、年月のうちに壁が損なわれないように配慮しました。トイレや事務室などの家具や内装も慎重にデザインし、レントゲンやカルテなど大量の書類も廊下に沿って効率的に収納するように工夫しました。
このような考え方の筋道は、住宅を設計する時にもそのまああてはまります。
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