主要駅から徒歩15分ほどの距離にあるこの敷地は、ずっと空き地であった。敷地には樹木が育ち、目の前には桜並木の通りがある公園が見え、小さいながら豊かな自然を感じられる場所である。一方で建てるには困難だらけだった。敷地形状は三角形で、高低差6mはある傾斜地と崖、前面道路は階段と歩行者用のスロープのみで搬出入は簡単ではない。さらには前面道路と敷地の段差を解消するブリッジが必要だ。
できるだけ自然に影響が無いようにしたいと考えた。構造的には擁壁を作らず、傾斜地の安息角に届くよう3m近い深基礎を作った。2本の大木(コナラとクヌギ)を残すように建物を配置している。基礎を建物の内側にずらし、1mほど張り出すように設計することで、木の根と崖を避けることで施工性を上げ、床面積を確保した。
玄関のレベルにはトイレを設け、少し階段を下りたところに2つの個室を、そして景色の良い2階にLDKと浴室を配置した。五角形の輪郭の中に作ったプランは2LDKであるが、その他に天井裏収納などの余剰空間を作り、将来の使い勝手に配慮した。
5面の壁に配置した開口からは周囲の風景を楽しむことができる。さらに内装のそこかしこに木の仕上げを使うことで、別荘にでもいるかのような雰囲気を持たせている。玄関から入った時に見える階段、階段を登り切った時に見える風景を切り取る開口などなど、普段の生活の中でふと感じることができる美しい場面を作った。