「築100年の古民家再生」は川崎市で行った古民家リノベーション事例だ。最も古い建物中央の部分が築100年以上、2階建て部分でも築50年近いという歴史ある民家だった。ロウソクの火がゆらゆら揺らぐほどの隙間風と冬の寒さを改善することが第一の要望、水回りの什器を現代的なものに変えたいということが第二の要望、第三に趣味室を作るという点が主な希望事項だった。
計画にあたり予算の中で最大限何ができるか、石場建て基礎の耐震診断、快適で省エネな外皮性能を確保する断熱改修、水回り動線の整理など検討を行って改修内容が固まった。
★大量の家財が保管されていた倉庫は。「趣味室」と風が通り抜ける「夏の間」へ」リノベーション
★居間、趣味室、夏の間などは丸太梁を出し、既存木製建具を再利用して古民家の歴史を活かす
★予算から改修範囲は1階のみとして2階は断熱改修の範囲外とした
1階のリノベーションは大規模なものになった。柱と梁を残して壁を撤去、屋根はカバー構法でガルバリウム瓦棒葺きにリフォーム。夏の間上部の屋根は一度撤去して新たに屋根を作った。居室の部屋位置は基本的にそのままとしたなか、浴室・脱衣・洗濯室は老朽化が激しかったため基礎から作り直し使いやすい動線とした。「夏の間」は断熱改修外の「半屋外空間」として、玄関を通らず直接入室できるスペースであり、ダイニングキッチンから趣味室へ至るルートとした。中間期~夏季は南北の3枚引き込み戸を開け放てば風が通り抜ける気持ちのいい居間スペースとなるよう考えた。
住環境性能とデザインの両立
趣味室や半屋外土間空間など、昔ながらの農家的使い方と施主の趣味の空間を盛り込みながらコストを抑えたディテールを工夫した。
住宅は家具や芸術作品ではありません。一人ではなく複数の人が共に住み、もしかしたら売却して他の人が住むことになるかもしれない大切な器です。プランや見た目の前に快適で健康な住環境の実現に力を注ぐべきです。快適性をないがしろにするデザインは住宅ではありません。そんな信念をもって、住宅設計に取り組んでいます。
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