東京都目黒区の住宅地に立地する、築24年が経過した集合住宅の住戸改修プロジェクト。30歳代の夫妻と子供の暮らしの場として、スケルトン改修によるインテリアの更新が求められた。
都心の戸建住宅では得がたい「広がりある平面的空間体験」にこそ、都心マンション居住における豊かさの可能性があると考えた。
対象住戸は東西に細長い形状をもち、西を賑わいある桜の並木道に、北を静かな寺院に隣接する立地環境にあることから、ローカルな場所性との関係が希薄になりがちな住戸内計画において、「周辺環境と呼応した住空間」を創ることが、併せて設計テーマとなった。
住戸の長手方向を縦断する一枚の壁を立て、西側は団欒の場としてリビングやダイニングを配置し、自然光に包まれた伸びやかな構成とする一方、北側は休息や思索の場として寝室や書斎を配置し、空間の重心を下げて落ち着いた設えとした。
チークの木壁は、ランダムな割付けの中に建具を隠し扉のようにおさめ、大きな壁面を身体スケールに分節しつつ、
扉を閉じると全長13mの壁面として、奥に展開する空間の広がりを感じさせる。
周辺環境と呼応する異なる性格の場を行き来しながら展開する暮らしは、スケールとは異なる体験的な広がりをもつ。
その両者を壁によって体現し、ここでこそ可能な豊かな広がりを創り出したいと考えた。