敷地は大分市の大野川河口付近に位置する閑静な住宅地で北側遠景には海岸沿いの工業地帯との緩衝帯として設けられたグリーンベルトを望む。
設計をする上でクライアント夫婦が望んだことは、庭とLDKに一体感があり開放的な空間にしてほしいということ、広い軒下のあること、坪庭の見える浴室などであった。
部屋の内部に柱や仕切りを設けず開放的な空間を確保するため、構造は壁式鉄筋コンクリート造を選択することとなった。建物は直方体を上下でずらしたような形状をしており、ボリュームをずらすことによって内部や外部に発生した隙間にエントランス、バスコート、広い軒のある縁側などを配置し、人、光、風を内部に導いている。コンクリート打ち放しの壁が象徴する閉鎖的な壁をすり抜けて内部に侵入すると、大開口で内外部が一体となった開放感あふれる空間に到達する。
LDKの木製サッシュを両側の壁に引き込むことによって内外を遮るものを排除し、隣地との境界に立てた壁とに囲まれた空間がひとつの部屋であるかのように感じられる。
北側の一段高い狭い空間は、狭いがゆえの落ち着きと、緊張感を併せ持ったものになっている。2階は1階と同じボリュームを持つ空間で将来的な家族構成の変化に対応できるように計画している。
おおいたの住まい情報誌WISE17号掲載