敷地は滋賀県高島郡高島町、琵琶湖から5kmほど東へ入った小高い山の中。
人生のセカンドステージをご夫婦お二人と犬一匹が自然と共に暮らす小住宅です。
建物のフォルムは山の傾斜に馴染ませるように片流れの屋根をのせ架け、地形に逆らわない形とし、外壁を保護するために軒も深くとる。室内外に半屋外の軒下空間をはさみこむことでいわゆる「グレーゾーン」が創られ、緩衝帯となって雨天の日も建具を開け放して雨を愉しむことができるのは先人の知恵。
低く抑えた軒高により、建物に守られる感覚も生まれる。
外壁は京都北部美山町のスギ材を使う。現場の近くで育った木で住まいを包む。
東西に長い敷地のままに十一間(約20m)の間口を持つ住まいは、名付けて「十一間堂」。
室内も片流れの屋根形状をそのままに、全ての部屋に南側(山側)の光が射し込む設計。奥行きは二間(約3.6m)だから風通しは良好。
一間巾の建具を三枚づつ計十二枚壁に引き込むと、「場」と「心」が解放され、空間の空気が変わる。
自然のなかの建物は、こちらも気負わず素直に取り組む。
雪も多い。冬には陽射しを呼び込むハイサイドライトから雪がしんしんと降る様子も見てとれる。雨の音はもちろん、揺れる木々の枝葉、こずえは風を教える。
虫は容赦なく家の中に入り、羽を付けたシロアリも飛んでくる。地面を掘るとカブトムシの幼虫がたくさん。真冬でもクモがはいずり回る。
鹿の足跡が雪に残り畑の新芽を食らう。杉の樹が揺れているのはよく見ると野猿のようだ。
街に近い里山だが、そこには現実の自然がある。
厳しい季節や荒天候の時はそっとやり過ごし、限りなく心地良い穏やかな日は、恵まれた環境、光や風をを目一杯享受する住まいを心掛けました。
無垢の木を使い手間のかかる平屋建ての建物にもかかわらず、ローコストで仕事をしてくれた地元の若い大工さん、職方にも感謝。
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