このプロジェクトは、こちらの家で育って巣立った方が、今度は家主となって住み継ぐための改修計画でした。数年前お施主さんは、先代の物の整理と並行して、ここを拠点とする構想を始めました。
1階を新たな拠点、2階は今までこの家に在った大量の蔵書を保管する空間として使いたい。今までの物と新たな物が階別に共存するというご要望を頂き、それを起点として設計打合せを重ねました。
●大幅に手をいれる事になる1階は、
住み継ぐための機能(構造・断熱・使い勝手)を補強し刷新し、既存の素材も活かした空間になる事を計画しました。
●書庫と予備室となる2階は、
床の合板補強、東西南北の適所に合板による耐震壁補強、換気扇の新規取付の、最小限の性能補強を行いました。
1階の新たな拠点は、仕事のアトリエを併設した居住空間となります。仕事で使う道具や材料の最良の配置は重要です。
お施主さんは、仕事も含めたご自身の生活行動や習慣と、今まで拠点を移り住んだ試行錯誤の経験で、新しい拠点のシミュレーションを繰り返して設計打合せに対峙していました。
暮らしが始まったこの家は、生活用具、仕事道具、愛着のある物や本が、それぞれ在るべき所に納まった嬉しい光景となっていました。
住継ぐという改修計画は、住む人が改めてどうやって暮らすかを再構築する大切な機会だと思います。
もう一点、
居間の既存の柱は移動する事も可能でしたが、お施主さんは移動せずそのままが良いとのことで、居間に独立柱がある構成の面白さも活かして以前の位置のまま進めました。
完成以降、よくよく思い返すと、残った柱の意味合いが少し変化していました。柱をきっかけに改修前の間取りが思い出されます。先代の光景・・・ここまでが畳の部屋、こちら側が居間、ここが広縁、ここに本が並び、といった以前の暮らしの風景です。
空間に目を浮かべ、以前の境界線を目でトレースするための柱、という捉え方もできそうです。
既存の木造住宅を住み継ぐ場合、構造補強や断熱補強、設備更新といった性能的な更新は必要です。それに加えて、今までの面影を残したい、引き継ぐ要素と新しい要素を上手く共存させたい、といった、時間軸のある素材も設計要素として大切に扱いたいと思います。
工事中の様子も参考にしてください。
写真レポートが下記アドレスから見る事が出来ます。
「松戸のアトリエ 改修の現場から」
https://t-products.net/reports/松戸のアトリエ/3903/
人が暮らし始めた写真との比較で、出来立て時の写真と比べてみて下さい。
「松戸のアトリエ 出来立て写真」
https://t-products.net/reports/松戸のアトリエ/3799/
工藤建築 工藤達也
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