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記事作成・更新日: 2021年 6月14日

地震に備えてリノベーションしたい!木造の耐震補強にかかる費用や注意点

建築士の目線で木造軸組み工法(在来工法)の耐震補強費用の目安と、耐震補強に向いている建物について解説

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SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)

建物の耐震補強工事については、既存の建物がどの状態にあるか、どのレベルまで耐震性を上げるか、また、耐震補強に伴いその他関係箇所の改修がどの程度必要か、によって大きく費用が異なります。日本の住宅で最も多く建てられているのは木造軸組み工法の耐震リノベーションについて建築士が解説します。

耐震補強にかかる費用

日本の住宅で最も多く建てられているのは木造軸組み工法ですが、その木造軸組み工法の耐震補強の考え方は、柱と柱の間に筋交いを入れた“耐震壁”をバランスよく配置することで地震の揺れを軽減するものです。

専門的には、その他にも様々な検討項目がありますが、簡単には既存の建物に筋交いの入った耐震壁がどの程度配置されていて、不足分はどこかを調査します。その不足を補うことが耐震補強工事となります。

木造軸組み工法の住宅は、3尺=90cmごとに間柱が入っています。その90cmの間柱の間に筋交いを入れることで耐震壁とします。

その90cmの耐震壁を設置する工事費は1箇所あたりおよそ10万円程度です。既存建物耐震診断を行い、その耐震壁の不足部分が5箇所であれば約50万円です。不足部分が10箇所あれば約100万円です。

これは単純に耐震補強のみの費用ですので、実際は耐震壁を取り付ける箇所に関係する内装材や、外装材、お風呂やキッチン等の設備類を撤去しないと耐震壁を取付出来ない場合が多々ありますので、耐震壁を取り付ける為に、関係する内外装や設備の改修費用が別途必要となります。

実は、それらの耐震壁を取り付けるために、関係する内外装や設備の改修費のほうが高くつく場合が多いのが現状です。たとえ結果耐震補強箇所は2箇所であっても、内外装や設備の改修が必要となり、何百万円も必要となることがあります。

できれば100点満点の耐震補強が望ましいですが、最初から100点満点を目指すのではなく、今の予算の中で80点でもよいので耐震性を向上させておいて、残りの20点は、タイミングが来たら耐震性を向上させるのも手段のひとつです。

例えば、ある柱部分の補強をしようとすると耐震補強は10万円で済むのに、お風呂とその関係する内装の改修が発生する関係で、合計数百万円必要となる場合もあります。その場合は、柱部分の補強は諦めて他の補強に着手し、柱の補強はお風呂の改修時期と合わせて同時に行い、耐震性を向上させる方法もあります。

木造軸組み工法の耐震補強の方法

木造軸組み工法の場合、大きくは下記の3点を重点的に補強し、地震の揺れを軽減し建物の崩壊や損傷を少なくします。

1.耐震壁の量

柱と柱の間に筋交いが入った耐震壁がどの程度入っているかにより評価します。

2.耐震壁のバランス

耐震壁が平面上、偏った配置になっていないかを評価します。

耐震壁の量が十分であっても、平面上偏った配置であれば、建物の揺れは増幅しますので、バランスよく配置することが重要です。

3.構造部分の接合部

大きな地震が来た時に、柱や梁、筋交いの接合部が地震に耐えようと踏ん張ることになります。その接合部が弱ければ、筋交い等の役割はなくなりますので、接合部の強度も重要となります。

上記の3点を満足するよう既存建物の耐震診断を行い、不足部分はどこかを見極め、どの部分をどこまで補強するかを予算の範囲内で行うことが重要です。

要注意!悪質なリフォーム業者の提案

ここで、よく聞くリフォーム業者の提案で注意が必要なものがありますので、いくつか紹介します。

まずは「屋根裏や床下に耐震補強金物を取り付けます」と提案してくる業者です。建物の耐震壁の量やバランスも調査せずに、屋根裏や床下の耐震補強金物だけをつけても建物の耐震性の向上は微々たるものです。

それに何十万円、何百万円も請求されるものを見かけますが、それだけの金額があれば、既存の建物を耐震診断し、耐震壁をひとつでも追加するほうが耐震性の向上に大きなメリットがあります。

また、「ホールダウン金物で建物を強固にします」と提案してくる業者がいます。確かにホールダウン金物は、直下型の地震に対して土台から柱が抜けないようにする有効な金物ですが、これも上記と同様に、耐震壁の量やバランスが先で、ホールダウン金物はそれの次に必要なものです。既存建物の調査をせずに、ホールダウン金物だけの設置を提案してくる業者は注意が必要です。

耐震補強に向いている建物かは築年数でわかる

耐震補強に向いている建物については、建物の築年数が大きく影響します。

まずは法律的に、1981年に耐震性に関する基準が大きく変わりました。それ以前に建てられている建物は、現在の耐震基準に合致しない建物となっており、震度6強の地震で崩壊や大きな損傷を受ける可能性があります。

1981年以前の建物は、2021年現在では築年数40年以上となります。築年数40年以上の建物は、耐震改修に大きなメスを入れなければならない可能性が高く、改修費用は高額なものになる可能性が高くなります。

また耐震補強では、内装や設備で隠れた構造部分を改修する必要がありますので、耐震補強以外で改修が必要となる部位が多く発生します。費用的には、耐震補強工事費よりも、それら関係する内装や外装、住設備の改修費のほうが高額となります。

特に、住設備の改修費が高額となりますが、一般的には設備の更新時期は15年サイクルと言われています。

つまり、耐震補強に向いている建物としては、築年数は40年より新しく、設備の更新時期にあわせて耐震改修工事をするのが最も費用対効果が高い改修となります。

もちろん、築年数が40年以上経っている建物であっても、耐震補強に向いている建物も存在しますので、まずは専門家の耐震診断を受けてどの程度の補強が必要かを把握することが重要です。

耐震リノベーション、実例紹介

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ケースAでは、水周りの更新時期とあわせた改修で、見た目はほとんど新築で耐震性の向上ができ、費用対効果の高い改修となっています。

ケースBでは、バリアフリーや内装改修など、耐震改修以外にも本格的に着手し、築年数が53年と古い建物を新築同様に蘇らせています。

まとめ

地震に備えてリノベーションすることは非常に大切なことですが、耐震補強に関しては専門性が高く、業者の言いなりとなることもあります。

最初から100点満点の耐震性を目指す必要がないこと、また、既存の建物の状況に応じて今全てを対応しないという選択肢を持つことも視野に入れましょう。

それらを丁寧に提案してくれる専門業者、建築士との出会いが大切です。


文:onearchi(一級建築士)

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