30代のご夫婦と子供が新しい生活を始めるために計画された住居です。
敷地は大阪府の堺市内で、御陵(天皇の古墳)に隣接する位置にあり、絶好のロケーションと 共に、周辺はとても静かで、ここが大阪の住宅街であることを忘れさせるものです。 そして御陵はお堀(水面)に守られるかのようで、手付かずの自然の木樹に覆われたその姿は、まる で神でもやどしているかのような錯覚すら覚えるものでした。
このロケーションを活かすべくスタートした計画の基本方針は、当然ながら自然に覆われたこの美 しい御陵の景観を全てのスペースより望める事になり、あとは御陵の描く美しく緩やかな曲線を建 物のどこかにデザインとして取り入れれないかということでした。
計画初期は平屋での計画もありましたが、建ぺい率と必要面積、要望の関係もあり、最終的には1階にパブリックスペース、 2階をプライベートスペースとした一部2階建てとし、建物の中央に中庭を置く形状に落ち着きまし た。
1階は道路側より順に前庭、和室、中庭、LDK、奥庭と続き、その先に隣接する水面( お堀)、そして古墳へと連続し、全ての場所から隣り合う空間を突っきって古墳を望める配置とし ています。また内部と外部の空間が交互に連続することでリズムと奥行き、適度な間を持ちつつ 、つながりのある構成となりました。
外部に面する建具は全て木製の引き込み戸とし、全開口 時には1階全体が古墳まで突き抜けた気持ちのよい一体空間となります。
また2階の居室へは高さ5mの吹抜を介しながら緩やかな階段でアプローチします。 勿論その2階の各部屋からも美しい御陵の自然を望むことができるよう配慮されます。
外観は全体の高さ、軒の高さ共に極力低く抑えることで、水平ラインを強調させました。
また道路側から建物を見た時に奥へ向かって大きく伸び上がる印象的な一枚大屋根の形状は、 古墳の描く緩やかな放物線をイメージのもと、外観のデザインとして取り入れられました。