古くからその場所に根ざし、クライアントと共に成長してきた大きなケヤキをはじめとした様々な樹木の中に浮かんだツリーハウス。
1階は駐車場、2階をオフィス兼用住宅としています。
高層化する周囲の建物群の中にありながら、常に緑を感じられる住宅です。
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空の人がいて、地面の人がいる。
周辺には高層の集合住宅が建つ。そこには新しい居住者がいる。
路上は大勢の人が行き交う。そこには挨拶を交わす近隣住民もいるが、圧倒的に通りすがりの人たちの方が多い。
敷地は八王子駅前の中心市街地に近く、商業を中心とした市街地と住宅地、変わろうとする街並みとそのままであろうとする街並みの境界にある。
世界観というバリア
建主は以前よりこの地に住み、周辺環境とその変化を肯定的に捉えながら以前と変わらない生活をおくりたいと考えていた。
周辺環境が大きく変わる中で変わらず自分達の「住みやすさ」を作り出す為に、自分達の明確な世界観を再提示した生活スタイルをとることで感覚的なバリアを作り出すことにした。
これは、排他的に高い壁を立ち上げ、物理的バリアを作ることで「住みやすさ」を獲得するのではなく、他を受け入れながらも自分達のアイデンティティ守る精神的なバリアのある環境を作りあげることで、疎外し合わない「住みやすい」適度な距離感を生むことになる。
敷地南側には建主と一緒に育った大きなケヤキの木があり、変化する周辺環境に対してこの場所にゆったりとした時間のリズムを与えていた。このケヤキの木が醸し出す雰囲気にこれからの時間の流れを委ね、樹上生活をモチーフとした生活スタイルを作り上げていくことにした。
木の上の人
建物は1階を駐車場とし、樹木の枝葉に近い2階を居住スペースにしている。
どこにいても木立の中にいる感覚が得られるように、ゾーニングされた各居住スペースは樹木と交互に配置され、それを室内外にわたる回廊がつなぐ中庭型の建物となっている。
建物は大きな要素として木立の様な形をした壁柱とスラブとで構成をし、それだけで様々な様相が現れることを期待した。
木立は空間を分け、繋げている。
あの木立の向こうがあっちであり、その向こうがさらに奥のあっちになる。視線は木立の間を抜け、視点が移されながら景色が作られていく。景色は見る対象でなく見る者を包含し、主客一体となった空間が生まれる。
光は木立の向こうの明るい方から差し込んでくる。そこで初めて木立の向こうに空があることを感じることができる。
リビングの天井高さは4450mm、回廊の一部にあるライブラリーはおよそ半分の2200mm。各スペースは天井高さに変化を持たせている。大きな木の下には大きな空間が生まれ、その下にはとどまる場所ができる。コンクリートでできたクールな木立の中で、スラブの位置を操作することで空間に表情を与えている。
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