建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
2012年10月 2日

篠山に移り住んで見えてきた自分たちらしい暮らしのカタチ

兵庫県の篠山で野澤さん夫婦が自分たちの生き方を見つめ直し、たどり着いた「住まい・店・工房」が三位一体になった暮らし。

漆・木工作家 野澤裕樹さん

のざわゆうじ デザイン集団・grafに立ち上げから参加。2011年独立し、兵庫県の篠山に工房『poncrafts』をオープン。設計活動をする奥さまの香織さんと共に『居七十七』(いなとな)を開店。http://poncrafts.com/home/inatona

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昭和30年代に建てられた一軒家は、野澤さん夫妻がセルフビルドでリフォーム。二人が腰掛けているのはショップ「居七十七」の喫茶スペース。縁側のような開かれた場所。

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左/自然のままの緑が茂る庭。木の枝を製材せずに使ったテーブルは自作。天気がいい日はここで食事を採ることも。
右/漆を塗る前の木地の状態の器たち。作品は木地づくりから始め、すべての行程を裕樹さんの手で行っている。


 兵庫県の篠山に移り住んだのは5年前、大阪のデザイン集団「graf」で、野澤裕樹さんが家具職人、奥さまの香織さんが設計デザインをしていたときだ。
「毎日が忙しくて、家では寝るだけ、起きれば仕事のことばかり考えている、せかせかした生活を送っていました。暮らしに携わる仕事をしているのに、自分たちの生活は蔑ろにし、想像で理想の暮らしを形作っている気がして、ずっと違和感があったんです。二人とも山が好きだったので、自然の中で地に足をつけて暮らしてみようと思いきりました」(裕樹さん)

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左/裕樹さんの作品を始め、伊藤三郎さんの銅工芸品、高下隆次さんの鉄金物、竹細工などを扱う「居七十七」。
右/「居七十七」という店名は、「居」が住まいを表し、「七十七」は漢字の「喜」の古い書体をもとに名付けた。

 通勤には往復で4時間。本を読み、考え事をする間に、スイッチがオンからオフに切り替わる、「この時間がかえってプラスでした」と裕樹さん。ずっとやってみたかった木工旋盤にも取り組み始め、その魅力に目覚め、出来上がった小物をお店で扱いたいという想いから、独立につながった。選んだ場所は、篠山ののどかな集落に建つ、昭和30年代築の一軒家だ。

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左/喫茶スペースで寛ぐのは友人である家具職人の佐々木拓也さん一家。
右/古い箪笥など、店内の味のある什器は友人たちから譲り受けたもの。

「間取りから、住まい、工房、店が一体になった、僕らの望む暮らしが想像できたんです。費用はかけたくなかったので、自分で改装できる程度の古さだったことも決め手でした。今もぼちぼちと手を入れながら暮らしています」(裕樹さん)

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日本オスモのオーク材フローリングを張り、キッチンを移動させたリビングダイニングキッチン。キッチンカウンター造作中で、天板はタイル貼りに、正面はコルクボードを貼る予定。

 朝から工房でひと仕事して開店準備、再び工房で日が落ちるまで作品作り。香織さんは設計デザインの仕事をしながら、お店番。好きなことに打ち込む、健やかな毎日だ。

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住まいの一角に設けた工房。最初は趣味として始めた木工だったが、「作ったものを友だちが喜んで使ってくれるのがうれしくてどんどん夢中に」と裕樹さん。

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篠山は冬の寒さが厳しく、薪ストーブが活躍。写真左は本間製作所のもの、写真右は喫茶スペースに置いたNOZAKI(野崎産業)のダルマストーブ。

「制作で使う漆は機械を使わず自然乾燥させているので、乾くまで24時間態勢。仕事が終わったらお風呂に入り、それから漆の状態をチェックして、夕食。仕事と暮らしにきっちり線引きするのではなく、一緒にある。昔の商店ってそうですよね。この形が僕には楽なんです」(裕樹さん)
気分が乗らないときは早めに切り上げ、友人らと会い、気持ちを切り替え、次の日また頑張る。自分たちにちょうどいい速度で時間が進む。

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拭き漆やオイル仕上げで木の素材感を生かした裕樹さんの作品。使い込むほどに味わいを増す。

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左/木工のための道具が並ぶ工房。木製サッシの磨りガラス窓越しに緑を感じる環境。
右/押入れは襖を取り払い、見せる収納に。CDやレコードとともに、裕樹さんの試作の器が並ぶ。

「木工は手加減が重要。作品になる、ならないが一瞬で決まってしまうところがあって、そこが面白い。以前は急な用事や誘いで仕事が中断することも度々でしたが、今はペースを乱されず、自分の中にぐーっと入り込んで集中できる。本当に自分に合っていると思います」(裕樹さん)
店の改装を優先し、住居の改装はまだまだこれから。とはいえ、仕事も暮らしも、十分に豊かだ。

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デッドストックのタイルなどを扱うコーナー。野澤さん夫妻は家具や空間のデザインも請け負う。

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リビングダイニングの天井には、アクリル板をはめ込んだトップライトを造作した。

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