夫婦と子供2人のための築30年のマンションリノベーション。子供が1人増えたため、将来を見越して同じマンションの75㎡の区画(フラット・ヒモンヤ)からこの90㎡の区画に買い換えて、リノベーションをすることになった。
廊下を大空間の一部に見せる
面積を確保しながら、戸数を詰め込むプログラムを持つマンションは、間口に対して奥行きが深くなり、専用区画内がワンルームでない限り、どうしても廊下が発生するという特性がある。
既存のプランはL字型に伸びる廊下にリビング・ダイニングを含む各室が取り付くレイアウトで、廊下の閉塞感が強かった。また全体面積の割にはリビングが小さく、北側にある55㎡のルーフバルコニーへ出ることのできる部屋はリビングではなく寝室だった。
このリノベーションでは廊下の閉塞感をなくし、リビングをルーフバルコニーへと連続した開放的なスペースとなるように平面計画をすすめた。既存の和室2室を撤去し、バルコニーに面する部分をリビングとし、もともとリビングがあった部分はアトリエと主寝室とした。また平面の中央に位置する水周りのコアを黒板塗装で仕上げ、リビングが外壁、寝室に面する壁と玄関から続く廊下の片側の壁はすべてラワン合板オスモカラー仕上げとして、大きな空間の中央に黒板のヴォリュームが挿入されたように見せ、玄関に入った時点で廊下ではなく、リビングを含む大きな空間の一角に入ってきたように感じられるようにした。
家族の距離感の微妙な調整
フラット・ヒモンヤでも家族がどのように互いの距離感を保つかがテーマだったが、当時に比べて、子供達の年齢が上がったため、距離感の微調整を行った。前回のリノベーションでは引き戸を多用したが、今回のプロジェクトでは全て開き戸とし、それぞれの個室から音が漏れないようにした。また子供部屋をリビング、ダイニング、キッチンから離し、主寝室をダイニング横に置き、廊下から直接リビングが見えないようにすることで、子供が就寝後も大人がリビングを快適に利用できるように工夫した。
既存のキッチンは閉鎖的だったので、新しいレイアウトでは、リビング・ダイニングと視覚的に連続するレイアウトとした。キッチン内で調理している人間以外も食事の準備を手伝えるように、キッチンの内側からも外側からもアクセスできる食器や食品の収納を設けた。
高さ2.4m、長さ12mの黒板壁は子供達の落書きや勉強だけでなく、家族のメモがわりにも使用している。夫は朝必ずスタディでメールをチェックしてから仕事に出かけるので、忘れそうな伝言があれば、その扉の前にメッセージを書いたり、キッチンの前にはその日の買い物リストや、いつ家で夕食を食べるかなど、それぞれのスケジュールを書いたりしている。この黒板はコミュニケーションボードとして、フィジカルに広がった家族の距離を調整する役割を果たしている。
資料請求にあたっての注意事項