玄関からリビングの各スペースの床に段差を設けたT 邸。食の場面で大きな効果があるという、大胆なデザインの魅力とは?
text_ Makiko Hoshino photograph_ Kaori Nishida
西谷の家
(横浜市保土ケ谷区)
- 設計
- MDS 一級建築士事務所
- 住人データ
- 夫(38歳)会社員、妻(33歳)主婦、長女(3歳)、次女(1歳)
山梨の悠々とした自然の中で育ったご主人。お子さんを授かり、手狭なマンションから住替えを考えたとき、故郷と似た環境であることを重要視したという。
将来、子どもが独立したとき、帰ってきてほっと安心できる”実家”でありたい。そのために少しがんばってでも、のどかな場所に一軒家を新築したいと思いました(ご主人)
選んだのは川の向かいの敷地。せせらぎや鳥が木の実をついばむ姿など、都会とは思えない光景が広がる。設計は、敷地の特徴を活かしたさまざまな事例で知られるMDS一級建築士事務所(以下、MDS)にオーダー。「過ごし方に幅が出る住まい」「訪れた人が使いやすいキッチン」「川の風情を取り入れた暮らし」という3点を希望した。
そこで出た答えが、玄関、キッチン、ダイニング、リビングを間仕切りのない大空間におさめて、それぞれの床に段差をつけるというプランだ。リビングの窓際は一段上げてL字型の廊下をつくり、同じ高さでデッキを設置。結果、LDKに4層の床が生まれ、色々なところに”居場所”ができるようになった。
ともに料理好きで、週末によくホームパーティーをしているTさんご夫妻。ユニークな設計は、そんな食のシーンでも効果を発揮している。
グラス片手に廊下に腰をかけるなど、床に段差があることで、思い思いにくつろいでもらえるようになったのが嬉しいですね(奥さま)
玄関と一体化させた開放的なキッチンは、誰もが気兼ねなく利用できるつくり。壁一面にオープンな棚を造作しているので、客人が自由にカップや皿を取り出せる。リビングに対面させ、料理中でも会話ができるようにしたメリットも大きい。
ダイニングからリビング、デッキまでを見渡せるため、みんなとおしゃべりをしながら料理や片付けをしたり、冷蔵庫から飲みものを出してデッキを走り回る子どもに渡したり。コミュニケーションを取りつつ家事ができるんです(奥さま)
リビングの床のレベルを上げることは、視覚的な効果も生んでいるとMDSの川村奈津子さんは話す。
リビングの視点が高くなることで、川沿いのフェンスの圧迫感を解消し、窓越しの景色が開けるように工夫しています(川村さん)
ニーズをすみずみまで叶える住まいに、大満足しているTさんだ。
専門家プロフィール
1992年 東京理科大学理工学部建築学科卒業。94年 同大学院修士課程修了。大成建設株式会社設計部勤務後、2003年 MDS共同主宰。06年~ 日本大学非常勤講師。09年~ 東京理科大学非常勤講師。
1994年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業。大成建設株式会社設計部勤務後、2002年 MDS設立。14年~ 東洋大学非常勤講師。
MDS 一級建築士事務所
- 住所
- 東京都港区南青山5・4・35 ♯ 907
- TEL
- 03・5468・0825
- FAX
- 03・5468・0826
- info@mds-arch.com
- URL
- www.mds-arch.com
〈物件名〉西谷の家 〈所在地〉横浜市保土ヶ谷区 〈居住者構成〉夫婦+子ども2人 〈用途地域〉準工業地域 〈建物規模〉地上3階建て 〈主要構造〉木造 〈敷地面積〉60.79 ㎡ 〈建築面積〉36.46㎡ 〈各階床面積〉1階 33.78㎡ 、2階 23.05 ㎡、3階 25.14 ㎡ 計 81.97 ㎡ 〈建蔽率〉59.98 %(許容 60%) 〈容積率〉134.8%(許容 200%)〈設計〉MDS 一級建築士事務所 〈構造設計〉大賀建築構造設計事務所 〈施工〉仲野工務店〈設計期間〉6ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2014年
※この記事はLiVES Vol.81に掲載されたものを転載しています。
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