夫婦と小さな女の子のための住宅です。
敷地は穏やかな目白の丘にあり、クアイアントとの2年にわたる土地探しを経てようやく探し出した場所である。隣家の相続による敷地分割でできた一部分で、巾4.5m、奥行き18mの南北に細長い、いわゆる変形敷地。
クライアントの要望は明るいことと、寒くないこと。
しかし周囲の住宅で三方を隣家に囲まれて南側からの採光しか期待できないために、朝、夕は太陽が逸れてしまいますし、通常の2層の計画とした場合、長辺の壁量は十分に確保できますが、短辺に壁をたてたとたん1階には全く光が入らない状態になってしまいます。
そこで、細長い平面の長辺方向を分割するように3枚の耐力壁を立て2層のヴォリュームを4つに分けることにし、採光を最大限取り込むために屋根はやま・たに形状とし、開閉式のトップライトを多数配置しました。耐力壁には取り込んだ光や風の流れを操作する孔を注意深く開け、それぞれのヴォリュームは、やま、もしくは、たにを持ち、反射と拡散を繰り返しながら下階まで光を届けています。道路側に設けた開口部から入った風は、壁の孔とトップライトを通り、空へと緩やかに抜けていきます。
1階は、エントランスからリビング、ダイニングキッチン、そしてトイレ、バスルームと徐々にプライベートなスペースへ。2階へは、壁に巻き付いた階段でリビングから階下にダイニングを見下ろしながらたどり着きます。クローゼット、スタディースペースを兼ねた廊下を経由して南側に戻れば女の子のスペース、北側に進むと夫婦の寝室
。
複数のトップライトからの光は建物全体を突き抜けたり、しばらくすると目の前の壁がクローズアップされたりと空間の様態は生き物のように変化を繰り返します。三枚の壁が配置されることで奥行きはさらに引き延ばされ、孔で繋がったスペース同士の距離感は複雑で多様な表情を見せるものとなりました。
掲載誌:
新建築住宅特集 2012年1月号 「gate」
http://www.japan-architect.co.jp/jp/backnumber/book.php?book_cd=201201
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