「なるべく電気に頼らない暮らしをしたい」。建主夫妻の要望は明快でした。初めてお会いしたのは、東日本大震災の後。私もそれに大きく共感し、コンセプトの強力な原点となりました。そして今も、実際にエアコンに頼らずに暮らされています。
土地探しの段階から相談をうけて、建主が決めたのは東京郊外の小平市の26坪の土地でした。西面が道路、三方を住宅に囲まれているという環境で、できたのは、建坪10坪、延床20坪の小住宅。小さな土地ですが、東西の風がよく抜けます。その風をうまくつかまえられれば、家の中に夏の涼しさを呼び込むことができそうだと考えました。
1階には庭に面して土間があります。掃出し窓をあけると、庭と一体となった開放的な空間に。そこはサブリビングと呼んでいて、 薪ストーブと、階段に面した壁面本棚があります。また、サブリビングをはさんで寝室と水回りを配置。家のどこへいくにもこのサブリビングを通ることになります。
夏は土間のコンクリートに蓄冷された冷気でひんやりとして、さながら夏の避難場所になっています。また、真夏でも常に日陰になる北面に窓を配置。2階の高い位置にも小窓を設けて、家のなかに涼風を呼びこみます。冬は家の暖の中心である薪ストーブによって、吹き抜けを通して2階にもあたたかさが充満。建て込んだ市街地ながら、冬の日差しが1階土間まで入るように、土間のコンクリートが冬の日差しで蓄熱されるよう庇の出を考えました。
建主によると、ときおり2階に声をかけて、ちょうどよいあたたかさになったかどうか確認をとりながら、薪をくべるとのこと。それを聞いた私は、昔、湯加減をなかの人に聞きつつ外で風呂の薪をくべるところを思い浮かべて、笑ってしまいました。
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