2013年の3月。「住之江の元長屋」が、大阪の「リフォーム・リノベーションコンクール」で最優秀賞を受賞した。
イベントの一環でオープンハウスを開催したのが9月。かなりの雨の中、夫妻は小さなお子さん2人を連れてみえた。ご主人のお母様も一緒で、その5人が「松虫の長屋」の住人である。住宅密集地に建つ、築44年の四軒長屋、その中央二棟をリノベーションして住んでおられた。
光を求め塔屋ができ、洗濯干し場が屋根上に出来る。非常に良く乾くはずだ。その洗濯干しは残しつつ、家の中を明るく、人の集まる家にしたいという相談だった。
環境を大きく変えようとするなら、屋根上部分から直接の光を取り込むしかない。2階部分を減築し、光庭をとるプランを考えた。
ご主人は「この家に、母と同居してくれないなら結婚できない」と言ったそうだ。同居する奥さんが、その距離感を「5段くらいが丁度良いのでは」と言った。友達が来ていても気を使わない。かと言って、寂しくもない距離。絶妙の距離感と愛情を感じる。
1階には水回りと各寝室。中2階に母専用のリビング。光庭に開かれたLDKは、子供室を兼ねるロフトと繋がる。また、元界壁にはボルダリングを施した。奥さんは「おもちゃがリビングに広がらないのが何より嬉しい」と言っている。
洗濯干しはお母様たっての要望だったが、半分は月見台とさせて貰った。そこから見るハルカスはなかなかのもので、都会に住むなら、空を望む価値はさらに大きい。
こだわりがある分、外壁、タイル、家具の仕上げを決める際、迷うことも多くあったが、一緒に考え、アドバイスし、答えを出して行くのが私達の仕事。無理強いはしないのが私のポリシーでもある。
ご家族は本当に明るく、現場打合せでもいつも笑いが絶えなかった。その人柄がそのまま表れた健康な家だと思う。
建築は、クライアントだけ、設計者だけで創るものではないと確信している。
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2016年11月
MBS『住人十色』で放送されました。
2016年2月23日
フジテレビ『みんなのニュース』で紹介されました。
2016年5月
『住まいの設計7・8月号』に掲載されました。
「5段くらいが丁度いいのでは」というのは、同居するご主人のお母様を思っての奥さんの言葉。家族の友人が家に来た時でも気を使わないながらも、寂しくもない距離感。そうした繋がり方を思ってできたのが、こちらのお母さん専用リビングがある二世帯住宅。玄関からすぐにある階段を上ると、リビングまで程良い距離感で、うるさ過ぎて迷惑になることも、一人で寂しくなることもない空間にデザインされています。
家族愛。子供達が毎日のように現場に顔を出し、職人さんたちに「おうちを作ってくれてありがとう!」と頭を下げていたこと。
■2年後の感想 - 2017年10月 ご主人より -■
住みやすい家・使いがってのよい家・住みたい家・早く帰りたい家、私たち家族の思いはたくさんありました。
全部を詰め込みたいところですが、費用や5年後10年後先のことを考え、別案を私たち家族の思いに極力すり合わせ提案していただけました。
また、写真を見ていただいてもわかりますが、ガスメーターなど計器類やガス管・エアコンの室外機や雨どいなど、外観美も考え外壁にとけこむように設計してくださいました。
それらが存在することに違和感を感じなかった私が、今や、ハウスメーカーさんや新築された家を見るたび目がいくようになりました。
最後に、皆さんに必ずお伝えする事があります。
光熱費です。生活が始まれば相当重要ですよね。
長屋でフルリノベーション、隣の家と切り離すことなく松虫の長屋は風通し・日の光、春夏秋冬に対応してくれるようになりました。
”気づくより気がきく”(上から目線のようで、生意気で申し訳ありません)、
建築家・守谷さんたちに出会えて本当によかったです。