改修にあたった古民家は、大正期に建築されたもので主屋・北門屋・戌亥蔵・南に住居付納屋(以下、納屋)が建つ。百年近く風雨に耐え、暮らしが営まれてきた佇まいは“時間の潜熱” のようなものを感じ取ることができる。
しかし世代交代や生業、生活様式の変化、そして主屋の南側に迫り建つ二階建ての納屋がバランスを欠き、様々な問題を生じさせていることもあり解決するためには、納屋の解体が最善の策と判断した。また、創建時は北側が家の表であったが南側に道路が整備されたため、敷地北側から南側に街並みとの繋がりを持つ必要性が生じている状態にあった。
そこで、一期工事として納屋を解体し門屋や塀という日本古来から用いられている装置を重ねる様に挿入し、“守る” “仕切る” だけでなく“内在するものが滲み出る” 様に、内部に備える機能を外部に組み込む(具体的には後述)ことで床面積(負荷)を生むことなく、暮らしの潜在する多様性を生む手段として、門屋・塀の新しい可能性を試みた。
その姿は主屋を引き立たせる必要があり、解体する納屋の産物である土・石・木・瓦を、一度離ればなれとし素材の形を変え再会させることで、場所が持つ固有性を損なうことなく再構築することを心掛けた。出来上がってみて感じたのは、主屋群の持つ強さの度合いに改修部も調和し改修前よりも懐を感じさせる構えとなったと思う。結果として魅力ある景観づくりに永年寄与していけるものが出来たと考えています。
二期工事として主屋を改修。改修前は東側の台所廻りを覆う形で、床・壁・天井が張られていた。今回の改修では、創建時(カマドや内井戸もあった)の土間空間を復活させながらも新しいエレメントやマテリアルを組み合わせて、本来の古民家が持つ利点を取り戻しつつ快適な住空間及び温熱環境になるよう計画した。また、長年踏み入ることが難しかった、つし二階をすべて居住スペースとして使えるよう階段を二つ新設した。結果として多世帯がゆとりを持って暮らせるスペースを確保することができ、連綿と代々受け継がれてゆける家の形が具現できたのではないかと考えています。
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