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筒の家2
岩堀未来建築設計事務所
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「環境交流装置」としての「筒状空間」住居の可能性

敷地は南房総の海近くに新たに計画された分譲区画の一画。クライアントは現在は都心に住んでいる御夫婦で、週末住宅として使用し将来は移り住む計画である。このような条件を踏まえて、「環境交流装置」としての住宅という概念でデザインをした。これは、「環境」(=光、空気の流れ、音、熱、視線、気配、距離感など目にみえないデザインエレメント)を「交流」(=生活のなかに明確な意図を持って取り込む)させる「装置」(=既成の工業部品をシステマティックにアセンブルして構成した建築)として住宅を捉えるという考え方で、これは前作「筒の家」(新建築住宅特集2008年3月号)から連続しているテーマである。このような概念のもとにつくられた開放的な住空間によって、生活の中に自然環境や地域社会や家族同士の関係を緩やかに作り出すことを目指している。
「筒の家2」の屋根は、梁成が90センチでスパンが13.2メートルの木造合成梁を90センチピッチで9本並べて構成した。また幅60センチの耐力壁を平行に並べた列を2本つくり、そこを全て収納として構造要素と機能要素を集約することで、南北面が全て開口となり南北方向に抜けた開放的な「筒状空間」が実現した。南北両面の大開口から質の異なる光が入り、東西面のハイサイドやトップライトからの光は梁の側面に反射して内部に柔らかく導びかれる。梁下の空間では南北に風が通り抜け、梁成の空間では東西に風がり抜ける。また梁下までに高さが抑えられた壁・家具・建具が室内を緩やかに分節しつつ、梁成の空間では空間全体がつながり音や気配を伝えるため、各スペースは空間全体の中でコーナー的な性格を持ち、一体感と適度な距離感を作り出している。
一方、床は15センチ厚のベタ基礎に15センチ厚のモルタルを流しそのままの仕上げとしている。基礎側面・底面を断熱することで、大きな熱容量をもった蓄熱層が実現した。モルタルの中に温水パイプをはりめぐらし(浴室内も含む)、冬は深夜電力で温水を循環させ床に熱を蓄え、更に昼間のダイレクトゲインを利用し輻射によって室温をコントロールする。夏は夜間にアルミ通風雨戸を開放することで取り入れた冷気を床に蓄え昼間に冷気を放射する、さらに庇により日射をカットすることで効果を高めている。緩やかに仕切られた各スペースどうしは、床仕上材(モルタル)で連続し、また熱という目には見えない要素でも連続するため、一体感と適度な距離感はさらに強調される。また輻射によってコントロールされた室温は開口部を開放しても外気からの影響が少ないため外と内の空気がなめらかにつながる真に開放的な住空間が成立する。
このような住空間の性能は各部を構成する工法(外断熱パネル工法、屋根・外壁の通気工法)や部材(構造用合板、断熱サッシ、アルミ通風雨戸など)を既成の工業部品をシステマティックにアセンブルすることで確保されている。特に通気工法は屋根や外壁の中を空気が流れる「筒状空間」とすることで成立する。これは全体の空間構成がマクロ的な視点において「筒状空間」となっていることに加え、ミクロな部分についても「筒状空間」が展開されているということである。
「筒抜け」と言うように「筒状空間」は、何かがそこを通り抜けて交流する中心の無い開放的な空間をイメージしている。外部にも内部にも開放的な住空間は、生活の中に自然環境、地域社会、家族同士の関係を緩やかに作り出す。またバーチャルな情報が交錯する現代において、光、空気の流れ、音、熱、視線、気配、距離感など目にみえないが普遍的なエレメントの「バランス」と「豊かな変化」を内包した単純明快な生活の器をつくりだすことで、新たな関係性を生み出す。それが「環境交流装置」としての「筒状空間」住居の可能性である。

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岩堀 未来

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竣工年
2011
部屋数
指定なし
家族構成
指定なし
構造
木造(全般)
予算帯
2000万円以上〜2500万円未満
所在地
千葉県
ロケーション