【モノの密度】
閑静な住宅街に建つ住宅である。
施主の要望は大きく2つ。
1つは収納がたくさんあること。
それはその場に必要なモノはすぐ手に届く場所に
欲しいという機能上の希望であり、
室内にモノを散らかしたくないという
美観上の希望でもあった。
このことは、単なる収納力でなく、
たとえ多少散らかしていても
扉を閉じてしまえば室内は見せずに済むといった、
場としての遮蔽性、独立性が必要とされた
ということでもあった。
そしてもう1つは明るく大きなリビングが欲しいということ。
日常生活で開放的な気分を味わえるのはもちろん、
多くの親類や友人達が一挙に集え、
楽しく賑わうことのできる
場所が欲しいということであった。
これらの要望は「モノの密度」、すなわち、
キッチンや寝室といった
居室を「高密度の空間」(high density space=ls)として、
いわゆるリビングといった居室を「低密度の空間」
(low density space=ls)として捉え直すことができると考え、
それらの質および相互関係を考慮しつつ、
敷地内の適所に配置させることにした。
さらにこの計画ではこの密度を
そのままヴォリュームに対応させ、
5つの小さなヴォリューム(内、2つは上下に重ねた)を
互いの距離が取れるように隣地境界近くの四方に、
そして1つの大きなヴォリュームをそれらをまとめるように
中央に配置した。
この結果、内部空間と同時に外観も一挙に決定された。
大きなヴォリューム内にできた主室は全居室に面するので、
どこにいても家族の気配を感じることができ、
床レベルを前面道路より約1m上げたこと、
そして大きな窓を2階レベルのみに設けたこと
から、塀を建てることなく、プライバシーの確保と空間の
開放性が両立した場所となった。
周囲に高い建物がないので、吹抜の大きな窓は空のみを
切り取り、そこから射し込む光は主室と各居室に
一日中豊かな表情そして快適性を与えてくれる。
それはあたかも中庭のようでもあり、
内部にも関わらず外部空間のような開放感が得られる。
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