ご主人は私と同郷(小田原)で、現在も私と同じ杉並区在住、そんな繋がりから定年後に生まれ故郷で暮らすための家の設計のご依頼いただきました。
住まい手はものすごく建築に精通されている方で、希望する建築にも確固たるイメージがおあり。やがてそれが戦前の日本で数多くの西洋建築を手がけたアメリカ生まれの建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの建築であることをご主人自らが付きとめられました。
時間は十分にあるプロジェクトだったので、京都の駒井邸をはじめとするヴォーリズ設計のいくつかの住宅をお施主さんと一緒に見学するなどして、じっくりと方向性を絞っていきました。テイスト的にはこの駒井邸に極力近づけることに尽力し、一方プラン的にはごくシンプルな割り付けで、配置中央の回り階段とそこに沿うビルトイン暖炉が唯一の特徴、というところに落ち着きました。非常に素直でひねりの無い間取りとも言えますが、これもまたヴォーリズから影響と言えるでしょう。
これまで当事務所で設計した住宅には無かったテイストでしたが、とても良い経験をさせていただきました。