鳥取県米子市の準防火地域内に建築した 12.5寸勾配の屋根を持つ住宅。 準防火地域内に建築するため、1階は隣地境界線より3メートルの範囲(建築基準法上、延焼のおそれのある部分と定義される範囲)内に開口部(窓やドアなど)を設ける場合、遮炎性能、又は、準遮炎性能のある防火戸(鋼製建具、又は、国土交通省の認定を受けたアルミサッシに、網入りガラスや耐熱強化ガラスを嵌めた建具など)を設置する必要がある。 奥行きのある鍵型の敷地に対し、隣地から3メートルの範囲を避けて木製建具の開口部を配置したプランであるが、生活の中心となる居間には両側に大きな開口部を設けるため、間口2間(3.64M)の長方形を折り曲げた平面計画となっている。 将来的な床面の不足(子供部屋等の不足)にも最低限対応するため、屋根裏のような2階の空間にも床面を確保する木造住宅である。 軒を深く下げる鋭い勾配の屋根は、千年家と呼ばれる日本最古の民家にある軒と縁の造りを現代に応用したもの。 建物を囲う土間と合わせて深く垂れ下がる軒は、物理的に雨風から外壁を守るのと同時に、外と内を緩やかに繋ぐ中間的な領域(心理的緩衝帯)としても機能している。 クライアントの祖母が美容室を営まれていたという土地に合わせて建築した、誰も経験したことのない古くて新しい住宅のカタチ。