大山の森の中に小さな「森のスープ屋さん」が完成しました。
物語は始まったばかり。(白石博昭/しらいし設計室)
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ゆるやかな坂道を下って行ったその先に、この森は広がっている。
コナラやクロモジをはじめいろんな木々が伸びやかに生えるこの土地自体も、
向こう側へとゆるやかに下っている。
その周縁は崖になっているが、生い茂る草木にはばまれて眼下は見通せない。
耳をすませば聞こえてくるほんのかすかな水音が
見えない谷の気配を伝え、その深さをかきたててくれる。
勾配のある土地には、ちょっと歩きたくなる魅力がある。
見上げたり、見下ろしたり、角度によって変化のある景色がある。
落ち葉や枯れ枝が敷きつめられた地面は、歩くとちょっとふんわりしている。
ふと見通せば、木々が織りなす光と陰で場に明暗が息づいている。
それが自然と歩む道を、腰を下ろしたくなる居場所を導いてくれるような気がする。
決して広大な土地でもなく、
大きな景色に開かれているわけでもないけれど、
どこかおだやかで親しみと奥行きのある小さな森…。
この森の手前、中ほどにこの小屋は横たわっている。
木々の間を縫うように、森をくぐり抜けてアプローチ。
切妻屋根がかかった細長い木箱のような建物が静かに谷の方に向いて構えている。
小屋の中に入ると粗削りの板を張った空間に包まれる。
そこに開かれた窓から外を眺めると、新たな視点で新たな森と出会う。
そして、あらためてこの森に包まれていることを知る。
やがて時を経て古びつつも、
日々刻々と移ろいゆくこの森の季節や時間を変わらず映し出してくれる…
そんなかけがえのない建築、人の居場所であればよいと思う。
建築設計/ 遠藤宏(しらいし設計室)
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