敷地は1960~70年代に多摩丘陵を造成してつくられた住宅地の端に位置し、開発されずに残った緑地に面しています。地域住民が管理に関わっている緑地は日常的な憩いの場となっており、丘陵の谷に沿って蛇行する道は緑地に向かう人々の散歩道になっています。
ローカルパブリックな緑地と住宅地の双方の環境に添わせるため、緑地に向かって角度を振った3層の「櫓」と丘陵の段状に道に沿って建つヴォリュームの2つに分割し、内部階段で連結しました。
櫓は洞窟・サンルーム・物見台のような性質の異なる3つの小さな空間を重ね、環境をダイレクトに取り込みます。夜に明りが灯ると緑地や散歩道を照らす行燈のようになります。もう一つのヴォリュームは暮らしの中心となる空間とし、蛇行する道や周辺住宅地の庭に向かって開いています。2つのヴォリュームでレベルや開口をずらすことで、「の」の字を描くように5つのフロアが連なり、住宅内部に新しい風景が展開します。
土地探しから家づくりのご協力させていただき、いろいろな土地を一緒に見て感覚を共有しながら家づくりを行いました。緑地やゆったりとした緑豊かな周辺環境を気に入られて土地を決定し、その思いを大切にしながら建築計画を進めました。
構造設計: 正木構造研究所
施工: キューブワンハウジング
不動産仲介: 創造系不動産