「地域と暮らしを繋ぐ住まい」
敷地は滋賀県米原市、伊吹山麓に位置する自然豊かな集落にある。北側には生家でもある両親の住まいがあり、中庭を挟んで子世帯の住宅を新たに計画する。今もなお地域との繋がりが強いこの場所で、若い家族はどのような暮らしができるだろうか。親から子へと受け継がれてゆく地域コミュニティを享受するパブリック性とプライバシーの両立が求められた。そこで1階はリビングダイニングを中心とした開放的な空間に。南北の大開口を開け放てば、南庭のテラスから北側の中庭まで一体的に繋がり、光と風が通り抜ける。従来、日本の住まいは縁側などの緩衝領域を持つことで、内外を緩やかに繋いでいた。本計画ではリビングダイニングが直接これを担うことで、内部とも外部とも感じられる空間が出現する。大きく持ち出した庇と外部テラスは内外をシームレスに繋ぎ、連続性をより強く感じさせる。そこでリビングはフロアレベルから900mm掘り込み、開放的な中にも落ち着きを感じられる空間にしている。2階は寝室・子供室とテラスからなるプライベート空間に。都市住宅とは違い周囲に高層の建物が無いため空がより近く、そして広く感じられる。そこでテラスを複数に分け各室とともに配置した。これによりテラスがバッファの役割を果たし、各室のプライバシーを確保するとともにさまざまな自然環境を感じられる。
また一方で、各テラスは住まい手の生活を垣間見せる。開かれた空間は周囲との繋がりを生み出すとともに、住まい手の生活が外部へと溢れ出すことで、より地域と濃密な関係を築くきっかけとなる。そして、この新たな住まいが若い家族にとって豊かな暮らしを育む居場所となることを願っている。
写真/笹の倉舎・笹倉洋平
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