敷地は浜松市郊外の天竜川にほど近い静かな住宅地の中にあります。最近一人暮らしとなった祖母と同居するために、孫夫婦が建てた住宅です。
増築を繰り返してきた木造の古い部分を解体し、そこに小さなRC造を作る、それがクライアントからの要望でした。残す木造部分との関係性や予算を考え、木造での増築案をいくつか提案しましたが、RC造に対するクライアントの思いは揺るぎませんでした。
「シンプルな箱型のRC造に住みたい。」そんな昔からの思いがあったようです。
「室内は出来る限り各スペースが一体となるようにして欲しい。」これもまたクライアントからの強い要望でした。そのため、内部は南の大きな空間に北側の2つの個室が引戸を介して連続する、そんなシンプルな構成となっています。階高を極力低く抑えたのも、西側の木造部分への採光確保や空調のためだけでなく、2階の寝室と南側の居住空間との距離を出来る限り近づけたい、そんな思いからでした。
祖母が暮らす事になる木造部分の改修はほとんどしませんでしたが、今回の様なまったく違った建物の増築も、一種のリノベーションと言えるでしょう。異種構造、異種形態の2つの不連続な建物をどう関係づけるか、解体された木造の記憶を少しでも留める事が出来るか、そんな思いも今回の計画の大きな課題の一つとなりました。既存領域と緩やかに連続する西から南へと続く中間領域としてのデッキ、それがこの課題への解答でした。この空間は、多趣味なご主人がマウンテンバイクをいじる場所にもなっています。このデッキを覆う深く低い庇が、解体された古い木造屋根の記憶を、わずかにでも呼び起こしてくれればと願っています。
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