愛知県名古屋市南区で住宅の設計依頼を受けた。当該敷地は、隣地に築造する3m程の擁壁と接しており、敷地面積は100㎡に満たない崖条例の適用地域である。
崖条例の一般的な解決策としては、隣地擁壁付近に待ち受け擁壁を築造し、隣地の擁壁が倒壊しても、建物に支障のない様にする方法が良く見受けられる。しかし今回の設計条件として、ローコストの設計を求められていた為、待ち受け擁壁を築造する予算はない。
その事から新築する建物を極力、隣地擁壁から離した場所に配置し、既存擁壁が崩れる角度の高さまで、建築の基礎と一体になった、高さ1m程の待ち受け擁壁を計画した。
その外部環境の影響を、海面に波が伝わる様なイメージで建築の要素として、取り入れる事が出来ないかと考えたのが、設計の始まりである。
隣地擁壁→高基礎→ソファー・畳スペース→階段・ダイニングテーブル→トイレ・キッチン
この様に用途や空間造形が連鎖する事で、住空間が造り出されている。高基礎が室内に表れるところの高さに、腰かけるスペースを施し、その流れでその動作と繋がる場所や、スペースを連鎖させる事で、それぞれの個性のある居場所でありながら、コンパクトな纏まりを造り出す事が出来た。
周辺環境の文脈を読み取り、その要素をカタチとして表現する。環境から来る要素を造形的なモノの成り立ちで、空間を造る事が表現出来たと感じている。