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記事作成・更新日: 2017年 9月27日

擁壁(ようへき)って何?
住宅を購入するときに知っておきたいキーワード

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津田の家(+atelier)

2021年7月17日更新

「擁壁」は、土地を購入して新築をする際にも、中古物件を購入する際にも、どちらの場合も知っておきたいキーワードのひとつです。場合によっては、設置や修繕をするのに数百万円から数千万円もかかってしまうことも……。

みなさんは、擁壁(ようへき)という言葉を聞いたことがありますか?聞いたことはあっても、じつはよく知らないという人も多いのではないでしょうか。

「擁壁」は、土地を購入して新築をする際にも、中古物件を購入する際にも、どちらの場合も知っておきたいキーワードのひとつです。場合によっては、設置や修繕をするのに数百万円から数千万円もかかってしまうことも……。

そこで今回は、そもそも擁壁とは何か、どんな場合に擁壁が必要なのかをご説明します。

【関連記事】擁壁の課題を解決した建築事例 7選




擁壁って何?

「擁壁」とは、崖などの崩壊を防ぐための「土留め」を、コンクリートブロックや石などを使って安定させる「壁状の構造物」のこと。

道路から敷地が少し高くなっていて、その上に建物が建てられる場合、もしくは、隣り合った敷地に高低差がある場合には、崖や盛土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために壁が必要になります。それが「擁壁」です。

もう少し詳しく説明すると、土や粉粒体を積み上げたときに崩れない斜面の最大角度のことを土壌の「安息角(あんそくかく)」というのですが、その「安息角」を超える大きな高低差を地面に設けたいときに「擁壁」が必要になります。

もし擁壁がなかったら、そのまま自然の状態にしておくと、横からの圧力によって斜面が崩壊してしまうことも。つまり、「擁壁」は建物を守るという大切な役割を担っているのです。

一番基本的な擁壁は「重力式擁壁」といって、横へすべろうとする土圧を擁壁の重さそのもので支えようというものです。


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擁壁にまつわる、よくあるトラブル

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山の家(カナデラボ 一級建築士事務所)

ところが、どんなに頑丈につくられた擁壁でも、数十年という時を経て、次第に劣化が進んでいきます。古い擁壁がある物件を検討するときには、とくに注意してその状態を確認する必要があるといえそうです。

もちろん、新しい擁壁であれば安心ということではなく、亀裂やひび割れが生じていることもあります。

このとき擁壁がやっかいなのは、補修したとしても、ほとんどの場合、根本的な解決にはならないということ。高さや面積にもよりますが、擁壁の工事費用は数百万円から数千万円になる場合も。

もし、購入を検討している土地に古い擁壁があったら、市区町村役場で調べてみましょう。「構造計算書」と「完了検査済み書」が役所記録にある場合は、安全が確認された擁壁といえるので、擁壁工事の必要はなさそうです。記録がない場合は、構造計算ができる設計士など専門家のアドバイスを前もって聞く方が安全です。

「擁壁工事が必要でしょうか?」の専門家の答えを見る

不動産売買契約締結後、あるいは引渡し後に擁壁のつくり直しが必要となってしまった……ということのないように、擁壁も含めてしっかりと物件確認をする必要があるのです。


ほかにもある、擁壁にまつわる隣人とのトラブル

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東谷の家(加門建築設計室)

隣り合った敷地に高低差があり、その間に擁壁をつくる際には、上側の敷地所有者の責任のもと、上側の敷地内に擁壁が設置されるケースが多く、この場合は、上側の敷地所有者が費用負担をすることに。

ただし、上側の敷地所有者が擁壁をつくらなければならなといった法律や決まりはなく、あくまでそうするケースが多い、ということです。

下側の敷地において、地盤を削るなどなんらかの事情で高低差が生じた場合には、下側の敷地内に擁壁を設置することから、下側の敷地所有者の費用負担となります。

また、隣地との間の古くなった擁壁を、不動産業者の負担でつくり直すケースも。このとき、費用負担の代わりに敷地の一部を提供し、境界線上にまたがって擁壁をつくる条件が提示されることも。

さらに、擁壁の基礎部分が土地の境界線を越えている場合などもあり、その場合は上側と下側の敷地所有者の協議のもと、擁壁をつくる、または修繕をする費用を折半することも考えられます。

しかし、当初は問題がなくても、年月を経て所有者が変わるうちに、擁壁をつくった際の経緯がわからなくなるケースもあり、修繕が必要になった場合などに、どちらが費用を負担するのかなど、トラブルに発展することが少なくありません。

このように、敷地の境界線につくられることが多い擁壁は、その分、隣人とのトラブルになりやすいポイントでもあるのです。


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いろいろある、擁壁の種類

擁壁の設置に関する技術的基準として、宅地造成等規制法施行令第6条で「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石(けんちいし)練積み造(ねりづみ)その他の練積み造のものとすること」と定められていますが、これとは別に自治体の条例などがある場合もあります。

写真とともに、いくつか擁壁を紹介していきましょう。

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デッキ・ハウス(天工舎一級建築士事務所)

高さ5mを超える高低差に、コンクリート擁壁が設けられている住宅。一定の間隔で水抜穴があります。

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Usyoro/Twisting Roof(平林繁・環境建築研究所)

道路から2mほど高く造成された土地につくられた、間知石(けんちいし)をつかった間知ブロック擁壁。間知石は、石垣や土留めによく用いる建築、土木資材です。

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山の家(カナデラボ 一級建築士事務所)

山あいの傾斜地に建てられた、玉石(たまいし)擁壁。玉状の石を積んだものは玉石擁壁と呼ばれます。

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杉並区H邸(S.O.Y.建築環境研究所)

こちらは、大谷石(おおやいし)でつくられた、大谷石擁壁。大谷石も、よく擁壁につかわれます。

いかがでしたでしょうか。

擁壁によって、建物の印象も変わってきますね。まちを歩くときに、擁壁にも目を向けるようにしてみると、いつも見ているまちの景色も違って見えてきそうです。


もっと擁壁の建築事例をみる


いずれにしても擁壁の状態確認や施工は、専門的な知識と経験、土壌に適した工法を知っている専門家に依頼する必要がありそうです。

隣地との間に土地の高低差がある土地の購入を検討する際、擁壁のある物件を検討する際には、早めに相談するようにしましょう。


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参照

宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/kaihatu_kyoka/takuchi_gaiyo/02_hantei.htm

SuMiKa編集部

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