都内に建つ戸建て住宅です。四方をすべて隣地に囲まれた旗竿型敷地のため、プライバシーを守りながらも、明るい家とすることが求められました。
そこで、道路から続く竿部分には玄関や階段といった人の動く場所をコンパクトに配置し、奥の広がった旗部分にはリビングや寝室などのプライベートな空間をゆったりと配置することにしました。道路へと続く竿部分を移動空間とすることで、その先に広がる道路までが家の延長の場所として感じられます。道路では子どもたちが近所の子どもたちとキャッチボールをしたり、何かを取りに急に戻ってきたりと、そこでは家と道路との境界が曖昧で、都心ながら昔の下町のような風景が広がっています。
一方、道路から奥まった場所にあるリビングは、家族の親密な雰囲気をつくりだしています。通常よりも高く白い空間は、屋外にいるように開放的で、そこが窮屈な住宅密集地であることを忘れさせてくれます。リビングからは、上階へと続く階段が垣間見えて、リビングにいながらにして家族の帰宅を知らせてくれます。
旗竿型敷地という形状によって、街から隠れるような場所にできた家族の親密な空間は、どこまでも広がる都会の中にあって、「ここが自分たち家族にとっての中心である」ということを確かに感じさせてくれる場所となっています。