近年、病院勤務医の開業志向が高まっており、複数の開業医を一箇所に集めることで事業を効率よく進められる『ハコモノ・メディカルモール』が建てられるようになった。しかし、このような既存のモールは、診療以外の全ての手続き等を民間事業者(医療コンサルタント)が代わって包括的に行っており、開業医はその事業者がつくった既製の型に自分たちの医療行為を合わせていかなければならないのが現状である。
開業医とともに『創っていく』というコーポラティブ方式に似た自由設計のシステムに取り組んだこのモールは、その空間構成としてバリアフリーはもちろんのこと、開業医の地域貢献という意志をどう表現するのか、街並みとの調和や訪れる患者への気持ちの配慮といった「癒しの空間」をどう演出するか、そういう建築とその空間自体も一つの治療行為になれるデザインが重要だと考えている。
田園都市線「たまプラーザ」駅から徒歩2分という立地のため、その外観は駅からも容易に視認できる。地域医療施設としてのランドマークとなるように、清潔感のある白い外壁はコンクリート打放しに白塗装、そして光触媒を施した。
建物は前面の歩道からセットバックすることでオープンスペースをつくりだし、訪れた人々だけでなく地域住民のために提供した。そこには四季の移ろいが感じられる草木と水流がある水盤、ウォーターウォールがある。この水は地下のウォーターコートへと流れていく。心地よく聞こえるその水音は2階まで優しく響く。各医院はカーテンウォールで2、3方を囲まれているため、日差しがよく入りどこも明るく、水音、窓越しに見える木々の緑で心地よくゆっくりとした時間を過ごせる空間となっている。
照明においても、その効率以上に演出をこだわった。建物のテクスチャーをうまくいかすように計画している。草木、水面、壁、ガラス等を照らし建物の様々な面にその移ろいが反射されることで自然の要素と建物の素材感を優しく感じることができる。
階段等、様々なディテールはあえてつくり込むことせず、ざっくりとしたディテールにした。つくり込むことで変な重厚感や高級感等といった空間の質を訪れる人びとに感じて欲しくないからである。清潔感を保ちつつ、風土を五感で感じられる空間や建物にすることでこの地域のオアシスになれればと思っている。
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