築25年の木造事務所を、美容院に改修しました。
凡庸な建物でしたが、25年間街にあったことを肯定し、既存の状態から出発しながら、新しい建築をつくろうとしました。まったく縁のない建築が、突然、出現するのではなく、過去とのつながりを持った建築が現れることになります。それは、ローコストで改修するという、建築条件への適切な回答でもありました。
記憶の継承:外壁の複雑な窓配置は、既存の建築と関わるルールに則っています。
水平方向は、既存の開口部の位置を踏襲しています。
開口部の水平位置をそのままにすることで、既存の構造に負担を掛けずに、改修を行うことができました。さらに、柱には添え柱、壁には無機質系の構造用合板を張ることで、改修前より、壁面の構造強度を上げています。改修が、デザインだけでなく、構造強度の面でも建築の性能や耐久性を高め、木造建築としての存続年数を積みますようにしました。
垂直方向は、この建物に固有の6つのレベル(地面、床面、窓台、ドア上枠、天井面、打上天井面)に合わせています。
時間的な連続性を残し、住民の見慣れていた街並みのリズムはあまり壊さずに、それでいて、どこか新しく、向上させるような建築を目指しました。
一見すると、アットランダムな開口ですが、実際には、既存の建物の持っていたルールを顕在化し、その組合せによりシステマティックに出来上がったファサードです。
時間による変化を映し出す空間:室内は、美容院に付き物の鏡を、積極的に建築的装置として利用しています。
外壁の窓との相乗効果で、鏡は単純な空間を複雑にし、時間変化により、室内の光や景観を、さまざまに移ろわせます。床と天井も、全艶の塗装で仕上げて反射度を高め、光の変化に対する感度を上げます。室内に屋外が入り込んだような空気は、クライアントの、「戸外の雰囲気が気持ちよく感じられる美容院」という要望に対する回答でもありました。
活気の創出:外から見ると、窓で複雑に切り取られた室内風景は、鏡の虚像で分断され、更に、その奥の室内の実際の活動と重なって、複雑に見えます。そのため、室内の気配が、実際以上に、増幅されて感じられます。
これは、設計前に行った、新潟の美容院のリサーチに基づいています。美容院は、商品を置いている訳ではないので、通常の店では、客のいないときには、閑散と見えやすい業態です。
JIGSAWでつくり出した気配の増幅は、客のいないときにも、店内には、気配が満ちあふれ、いろいろな活動が行われているような錯覚の活気を感じさせます。複雑な窓配置や、鏡の効果は、他の店とは違い、つねに、閑散と見えにくいような効果をつくり出すための仕掛けとしても考えています。
http://www.future-scape.co.jp/g200303works/g200303worksimage/g2003i01jigsaw/g9903i01jigsaw.html
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