場所は奈良県明日香村。飛鳥時代からの歴史が色濃く残る場所であり、周囲には古墳や遺跡が点在する。
和風というものが確立する以前からの場所で、脈々と受け継がれた漆喰や和瓦、杉や桧といった技術や材料を現代に解釈しなおして形にした。季節の折に開放できる広間には深い軒がかかり、室内とも室外ともいえない半戸外が繋がっている。真ん中の丸柱は内外の結界を示すと共に犬を繋ぎ止める拠り所となっている。広間に雁行して食堂が緩やかに繋がり、そこから二階へと吹抜が続く。吹抜に面して子供の勉強コーナーがあり、家全体に気配が伝わるようになっている。主人の書斎や犬用の土間など用途に応じた部屋があり、二階の浴室と階段脇にそれぞれ軒に守られたバルコニーが外部からは深い陰影となって建物の表情を形づくっている。