「市川の住宅」は、鉄筋コンクリートの箱を入れ子構造によって構成しています。
外側の箱は、隣地や道路との関係をコントロールできるように開口部の大きさや位置を決め、内側の箱にはLDKや主寝室といった居住スペースを計画しました。
つまり、外側の箱は外部との関係を和らげ、内側の箱は生活空間のプライバシーをしっかりと守るようにしています。
そして、入れ子の隙間のスペースは内側の生活から少しはみ出たもの、例えば玄関や駐車スペース、リビングとつながるデッキスペース、浴室水周りなど、外部との関係を持ちながら内部とも繋がり、光溢れ風が気持ちよく抜け、生活を豊かにする余白の空間として機能します。
設計担当:納谷学、太田愉
構造設計:多田修二構造設計事務所 多田修二
施工業者:剛保建設株式会社 義本範人
構造形式:鉄筋コンクリート2階建(一部木造)
敷地面積:225.00㎡(68.06坪)
延床面積:152.55㎡(46.15坪)
1階床面積:79.45㎡(24.03坪)
2階床面積:73.10㎡(22.11坪)
ロフト階床面積:17.50㎡(5.29坪)
①外から見えない生活
箱の中に箱、敷地境界に沿った大きな箱の中に、生活するための内側の箱を入れているので、外側の箱が外からプライバシーを守ってくれます。
②大きな駐車スペース
ゆったり2台分の駐車スペースがあって、将来シャッターを付けられるようにしました。
③天井の高いリビング
2階にLDKを計画して、広いロフトを造って、天井の高いリビング・ダイニングができました。
近隣からのプライバシーの保護と静かな環境を得るため、鉄筋コンクリートの入れ子構造によって解決しました。
工事が始まって間もなく、敷地の中から遺跡が出てきました。
市役所との打合せと連絡を密に取り、工事は半年ほど中断して再開しました。
基礎周りの補強で少し増額になりましたが、竣工までたどり着きました。
設計が順調に進んでも、現場でイレギュラーなことが起こるかもしれません。
お金もさることながら、気持ちにも少し余裕を持ってスタートした方がいいと思います。
「市川の住宅」のクライアントは、住宅を建てる時にはそういうゆとりが必要な事を教えてくれました。
たまご
たまごは硬い殻の内側で、柔らかい白身と黄身が守られています。
「市川の住宅」で、コンクリートが外側の殻だとすれば、内側の生活は黄身、その中間の庭やガレージなどの外部空間は白身と言えるのではないでしょうか。
太田諭(スタッフ)
多田構造設計事務所 多田修二
剛保建設株式会社 義本範人