建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
建築家の棲み家
記事作成・更新日: 2014年10月 9日

『できるだけつくらない』からはじまった。暮らしの可能性を探す家

[建築家の棲み家 Vol.02 建築家 一條美賀]


「好きに暮らすってどういうこと?」。建築家は家の設計を通して、この問いかけの解を住み手と一緒に探します。
そんな建築家自身の住まいにおける「好きな暮らし」を覗いてみましょう。
建築家自らが「好きに暮らそう」を体現した「自邸のお気に入り」を紹介する本企画「建築家の棲み家」。第2回は一條美賀さんです。


初めまして。まんぼうの一條美賀です。
公私ともにパートナーの一條太郎と自宅兼事務所としてリフォームをしたマンションに、今年小学生になった息子と一緒に暮らしています。

10年ほど前、緑を臨む中古のマンションを購入し、当時は、大きなワンルームがほぼ事務所。いちおう寝る場所もある、その程度のラフな領域分けでスタートしました。

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リフォームをするにあたり、すべてをしつらえてそこに自分たちが納まるのではなく、まずは外箱を作り、そこからいろんな住まい方を見つけ、住みながら手を加えていく、そんな生活をしたいと思っていました。

だから、自力で作れない最低限の設備と仕上げだけで、『できるだけつくらない』を選択しました。

住戸内部をすべて撤去したスケルトンから
・全面モルタル塗りの土間床
・ブロックを積んで天板を載せただけの大きなアイランドキッチン
・風通しにこだわり、開放することも可能にした浴室とトイレと洗面が1室になった水廻り
これがすべてでした。

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それは「つくる」側にいる建築家としていろんな可能性を楽しみたい、という欲もありましたが、まだまだ住まい方の定まらない自分たち。
この先いろんな形を試してみたり、それをきっかけとして新しい何かを見つけてみたり。

自分たちが過ごす時間が持つ可能性をいろいろ開拓してみたい。住まいだけに限った話ではありませんが、スタイルが定まらないことが当時の私たちのライフスタイルだったように思います。

なんて書くとなんだか大袈裟ですが、住まいは暮らしを充実させるための拠点ではあるけど、あくまでベースでありすべてではない、という想いを持っています。

家づくりは一生のうちでもとても大きな買い物であり、その後のライフスタイルの変化や可能性を考え、多くの情熱を注ぐもの。ですが、それはゴールではなく、そこから新たな楽しみや暮らしが見つかれば最高だと思っています。

私たち自身、住み始めた時は電気屋巡りが好きなインドア派なふたりでしたが、今はキャンプや山歩きなど外遊びが好きで、休みを見つけては友達や家族で出かけるようになりました。

リフォームした住まいに移り、少しして犬を飼い始めました。約10年共に過ごしましたが、家の日当たりを楽しみ一緒にごろごろしている時もあれば、みんなで外に散歩に行ったり、もっと外を楽しもうとキャンプに行くようになったり。

いろんな変化がある中で、こうしたらもっと過ごしやすいかも、気持ちいいかも、と思って配置や家具を変えたり、身軽にいろいろ変えてみた時期もありました。

子供が生まれると、これまで普通に見えていたものが心配の種になってさらに物を移動したり、子供との過ごし方や距離感を考えるきっかけとなったり。
犬やキャンプ、子供との生活をきっかけにできた友達が我が家に集まるようになったり。

変えるのは収納の中身を移動するレベルのこともあれば、家具の配置や数日がかりで作る大工造作規模まで。

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何かを変える時には、外からの光が奥まで入ることや家族の様子がなんとなく見えることなど、これまでの暮らしの中で自分が好きだと感じた見え方を大事にしていますが、その時々に生まれる新たな景色も楽しみのひとつです。

家族それぞれが自分の時間を楽しむ姿や、気持ちよさそうに寝ている犬を眺めたり。
ダイニングのいつもの場所に座って本を読んだり、窓際のソファに持たれてなんとなくのんびり過ごしたり。

洗面所に立つ時は、目の前にある鏡を貼った扉を開けて深呼吸。

予定を意識して片づけるのではなく、自分たちが見つけたお気に入りの場所やシーンをいかにラクに維持し、楽しむか。
そのための工夫を考え、「なんとかなるよ」といろんなことにチャレンジして、とことん楽しむ。

住まいのことに限らず、そんな気ままに楽しむ暮らしが、今では私たちのお気に入りのライフスタイルになっています。


Text&photo 一條美賀/まんぼう


プロフィール

一條美賀/まんぼう

主な作品

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中野M

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鎌倉N

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保土ヶ谷S


Vol.03は石川直子さんです。


この連載のバックナンバー

Vol.01 大塚あや「私と椅子と、そして居場所」

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