計画地は都内の低層の戸建てや集合住宅の並ぶ閑静な住宅街という立地である。
建主からの要望は、都心へのアクセスの良さから会社員や学生の一人住まいを想定した集合住宅の計画で、周辺環境を継承すること、入居者が内外にわたり快適に生活できること、豊かな共用外部空間のあることであった。
■2つのアプローチ階段・ベンチ
ここでは、周囲の戸建ての雰囲気・スケールに合わせ切妻ボリュームと変形切妻ボリュームの南北2棟に分けレベル差のある敷地内にレイアウトした。レベル差を活かして北棟道路側先端を浮かして下部を自転車置場とし、レベル差を均した緩やかなマッシブなコンクリートのアプローチ階段とそれに続く2棟間をつなぐ軽快な鉄骨階段を核としてそれぞれの階段のつくり方に合わせて一体化したベンチを設えた。それら居場所に彩を添える植栽を伴う仕掛けが場所ごとに雰囲気を変え入居者相互のふれあいのきっかけとなるよう計画した。
■開放的なワンルームとくびれたワンルーム
南棟は水廻りと収納が住戸間のバッファとなりプライバシーを高め3方に窓があり庭やロフトと一体になった広がりのあるワンルーム住戸で、北棟はコンパクトな水廻りボリュームを中央に配し2つのエリアにゆるやかに分節する見通せないくびれたワンルーム住戸とした。
特に北棟はその見通せなさゆえに、昨今のCOVIT-19に端を発する社会(仕事場、学校等)からのリモートライフにも適うON/OFFをゆるやかに分けるワンルーム空間となり、2階水廻りボリューム上部のロフトは周辺建物より少し背伸びした小屋裏に位置し正対する高窓から周囲の家並みを超え遠方の緑と空を望めるちょっと特別な場所として用意した。
■軽量化・ユニット化したトラス階段
2棟間の鉄骨階段は狭い前面道路と工程の関係から重機使用が困難であること、階段の両側2か所の窓先空地をつなぐ避難経路上にあるため開放性を求められたことから、軽量化とユニット化が必要となった。これには人力搬入でき現場でのボルト留めでの設置可能なパーツに分割する方法を取り、手摺と同材のFBとプレートによる手摺も構造参加した3次元トラス階段とした。
外壁の焼杉は立ち上がり部分の基礎にも型枠で使用され面一の納まりで表情を連続させた。
戸建てのような2棟が特徴ある外部空間をたたえ、静かに佇んでいる。
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