<一二三(いんにっさん)の木塊・断面/組・指>
都内私鉄駅近の商店街に隣接する既存店舗のリノベーションである。
扱う品目は和菓子、それも生産者を厳選し素材を活かしたフルーツを包み込んだわらび餅オンリーの店舗である。
店主からは和菓子の店舗であること、本物の素材を用いたいとのこと、可能な限りローコストで、というのが要望だった。
「木塊・断面」
元の店舗は美容院だったがシンプルな内装であったため、既存仕上を剥がし最小限の仕上を施した元の空間の骨格を外郭として再現し、その中にディスプレイ・レジ・作業台・収納・冷蔵・客動線との緩衝体を一手に引き受ける無垢のオブジェ木塊を置いた。
無垢の木として一般に羽柄材として下地等に幅広く使用されるローコスト角材の一二三(いんにっさん:1寸2分×1寸3分断面寸法の角材/現状流通では30mm×40mm断面)を隙間なく束ねてこの塊を構成した。木塊にはコールドテーブルと収納が仕込まれ、商品は断面がアピールポイントでもあるので木塊の断面を表出させそれに呼応させた。
「組・指」
ファサードは一二三を量塊オブジェとしてではなく線材編物としての表情を試みた。
木の編み込みとして組子と指物のエッセンスを引用し、上部と軒は木の縦格子、下部とベンチ・木扉は立体格子・組子として表現し、華奢な寸法ゆえ反りやむくり等生じやすい木材の変形を可能な限り抑制するとともに凛とした佇まいを目指した。
積極的に表に出てくる機会の少ない一二三ではあるが、単一使用とそのつくり方の組み合わせの変化での空間演出は、統一感と多様な表情の獲得につながっている。
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