計画地は都内の閑静な住宅街を横断する斜面が立地である。
斜面地ではあるが、勾配はなだらかで、隣接して斜面の上下を結ぶ坂道があり、雑木林からつながった自然美あふれるおおらかな環境であった。
建主からの要望は、斜面であることのデメリットを逆手に取ることはできないか、また住宅地内に存在する特異な自然環境を取り入れること、そして斜面の途中から遠望できる富士山への眺望だった。
ここでは、なだらかな斜面であると同時に細長く湾曲した平面をなぞるように内外の複数の床を置いていき、それらを内外で回遊できるように様々な階段で結んでいった。モルタルの階段、木の詰まった階段、鉄骨の跳ね出しの階段、木の透けた大階段、オブジェのような家具と一体になった階段、デッキテラスの階段等、場所や用途・目的に合わせそれらから選択しレイアウトした。
これにより単なる斜面に過ぎなかった場所が、眺望や採光・通風、セキュリティを考慮した開口部と相まって、いろんな高さで周辺環境と出会い建物の要所から富士山が望める居場所の連続となった。周囲の高木の並ぶ雑木林に加え、建物周囲には中・低木や草花といった緑化を施し、視線の上下や遠近により変化する緑が楽しめるようになっている。また、隣接する坂道側には柵等がないので、道行く人にも緑と建物が一体になった景色を提供している。
外装は濃い目の色味で周辺環境に溶け込みながら存在感を表す木の板目の素地と焼杉、それと同寸法に割り付けられた板目型枠のコンクリート打ち放しとし、内装は明るい色味で開放感を演出する無垢の木とワラスサ漆喰、珪藻土、天然石等自然素材を場所に応じて少しづつ変化させ用いている。
斜面足元の駐車場から斜面上方の子供室のロフトまで空間が途切れことなく時にループしながら流れるようにつながった環境呼応体感ハウスとも呼ぶべき住まいが住宅街斜面の森に立ち現れた。
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