全く同じ条件の土地や建物は2つとしてない。
地理的気候的条件の違い、その土地に元々建物が建っていたのか、田んぼだったのか、等。
その土地や建物が持つ記憶をどのように捉えるのかも設計者の仕事の内だと思う。
2016年の熊本地震で実家が全壊した。
建っていた建物は田の字プランで2階で蚕を飼っていたような昔ながらの農家の民家。
私自身は住んだことはないが、小学生時代の夏休み等には毎年帰省して慣れ親しんだ家だったので、
更地になった時は悲しかった。
建築主である両親からの要望は地震に強いことのみ。
そこで、元の家が田の字プランだったことから、
経済的構造的に合理性のある2間スパンの正方形グリッドで構造フレームを矩形に形作り、
年老いた両親が住むだけの家なので、シンプルでローコストな平屋を計画した。
また、西日が強かった記憶もあったため、西側に水廻りを配置し、極力開口部も設けなかった。
そして、九州では杉が手に入り易いので、外装に焼杉、内装も床は杉板を用いた。
開口部も既製サッシや天井にシナ合板等を用いて、
コスト面に配慮して、仕様を選択した。