このマンションのオーナーは私の弟がオーナーだ。
もとは父の会社の倉庫があったが、そこにマンションを建てるという計画がもちあがった。
コンセプトは「長く住みたい」「永住したい」マンション。
街に愛着の無い人が暮らせば、ゴミのポイ捨て、路上駐輪など、周辺住人にとって、マンションが建つプラスの要素はない。
自分達が暮らす空間、建物、そして、街へと愛着、プライドを持って貰えるような建物でなければ、意味がないと考えた。
一生懸命に働き、こだわりがある。違いを求めるシングル、もしくは若いカップルの幸せな暮らしを実現できる建物にしたかったのだ。
「R Grey」という名前は私が考えた。
Rは鉄筋コンクリート(reinforced concrete)の略、Greyはそのままでグレイ。
コンクリートは人がつくる石のようなものだ。よって単純な色ではないが、木の手摺壁もグレイを選択し、キーワードとした。
紅茶のアールグレイとかけたのだが、紅茶のほうは”Earl Grey” と書き「グレイ伯爵」の意味だという。
名は体をあらわすというが、何か高貴で豊かな暮らしが連想されないだろうか。
収益を考え、木造3階建ても候補に上がったが、共同住宅である以上「頑丈」「燃えない」「プライバシー」は必須だ。また、美しくなければ、この建物、引いてはこの街に愛情をもってもらえない。
それらを考え、コンクリート打ち放しの壁式構造を選択することになった。
一般的な1LDKのマンションとは、違う次元に高めているつもりだが、以下に特徴をまとめてみる。
1. 安全
鉄筋コンクリート壁式構造は、最も頑丈な構造体の1つ。阪神・淡路大震災で一棟も倒壊していないといわれる。
2. 静か
コンクリート床の厚み18cmで防音床組み。上階は更に防音フローリングを採用。
3. 心地よい
南向きのバルコニーと大きな開口があり、反対の北側洋室にも開口がある。天井高さ2.6mの空間を、南北に風が通り抜ける。3層6住戸なので全てが角部屋。 バルコニーと庇が夏の光を遮断し、冬の光は遮ぎらない。平野西公園まで徒歩1分。
4. 便利
地下鉄平野駅から3分。向かいに銭湯、駅前にはコンビニが4件、ドラッグストアもある。飲食店も多く、銀行、スーパーは駅前のマンション側。徒歩30秒にある「チャッピー」のたこ焼きはかなり美味しい。
工事費の内情を知っている私からすれば、この質のマンションがこの家賃になることはないと言い切れる。なぜなら、父から安価に土地を借りているため、この計画には土地代がほぼ入っていないからだ。
永住したいと思ってもらえるか。
その答えを私は持っていない。出来るのは、誠心誠意物創りに打ち込むこと。
不安もあるが、楽しみのほうが大きいのだ。