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いまさら聞けない!家と暮らしのキーワード
記事作成・更新日: 2017年 1月23日

古材って何? 家づくりやDIYのための古材の入手のしかたとメリット、デメリット

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古民家のリノベーション。プレハブの外壁パネルにつかわれていたトタンをつかったドア。新しいパーツは鍵まわりのみ(写真:砺波周平)

家を建てるときやリノベーションをするとき、またDIYで棚などをつくるとき、古材をつかうと耳にしたり、実際につかいたい!と思う人もいるのではないでしょうか。

でも、そもそも古材ってどこにあるの?…という人も少なくなさそうです。そこで今回は、古材の入手のしかたやメリット、デメリットについて、古材をつかったリノベーションを多く手掛ける、元スピリタス代表・徳永青樹さん(徳永さんについて詳しい記事はこちら)に伺いました。

古材って、いったい何…?

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2015年に長野県茅野市で行われた「小屋フェス」のステージにも古材が使われた

古材には、新しいものにはない、長い年月を経た古材だけが持っている“風合い”があります。塗られたペンキあとが風化していたり、雨風にさらされて使い込まれた雰囲気になっていたり、昔の職人の手仕事のあとがあるなど、さまざまな表情をもつのが古材の魅力です。

一般的な「古材」の定義はありませんが、一般社団法人古民家再生協会東京によれば、「古材とは、昭和25年以前に建てられた建築物に用いられた木材」とのこと。つまり、およそ築50年以上の民家から取り出された木材、ということになります。

100年ほどかけて大木となり、木材として製材されたのち、古民家で何十年も使われてきた、自然乾燥した傷も痛みもある国産の天然木は、昔からちょっとした建物の修繕に使われてきました。

当時はリサイクル、リユースという言葉もなかったはずですが、建物の修繕だけでなく新築の際にも同じように、一軒まるごと古材をもらいうけて建てることも珍しくありませんでした。大工はそうした古材の目利きで、古材をいかに再利用するかが、職能のひとつでもあったのです。(徳永さん)

ところが、高度経済成長によって海外から新建材が輸入され、その新建材を用いた住宅が席巻するようになります。海外では古材は人気があり、盛んに売買されていますが、日本では、古材はなかなか誰でも当たり前に買えるものとしては流通しませんでした。その理由は、国内産の古材の価格が曖昧で、再利用されるまでの仕組みがなかったことにあるようです。

国内で解体された民家の古材のほとんどは捨てられて、海外から輸入した新材や古材までもが活用されている、という矛盾を抱えているのが今なのです。

いろいろある、古材の種類

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古民家のリノベーション。もともとこの古民家でつかわれていた、大黒柱の欅(けやき)、天井(2階床裏)の松のほか、床は栗の木をあらたに貼り直した(写真:砺波周平)

古材とひとくちにいっても、いろいろな木の種類があります。

従来の日本家屋では、柱・梁(はり)は松、床は松や檜(ひのき)、デザイン的に凝りたい部分は欅(けやき)、栗、桜や柿などの固い木が使われてきました。ほかにも、天井や雨戸には杉などの薄い板をつかい、蔵の地面から1mくらいの低い部分には湿気に強い栗がつかわれました。(徳永さん)

現在の在来工法の住宅では、たとえば柱には米松(べいまつ:輸入材)、床であれば、ベニア材の下地の上に無垢材または化粧合板のフローリングを貼るのが主流です。

人工乾燥した米松は伸縮しないので寸法が狂わず、高気密、高断熱の家がつくれることから広く一般的につかわれているようです。

2〜3ヶ月という短期間で木材を人工乾燥すると、急激に乾燥させるので油分まで抜けてしまうため、寿命は1代限りで、そのあとは古材としてはほぼつかえません。人工乾燥といっても、海外では1年くらいかけてじっくりと乾燥させ、自然乾燥に近い木材もあるようです。(徳永さん)

また、木材ばかりに目を向けがちですが、家を建てるときにつかわれた部材はすべて古材です。木材のほかには、小屋の屋根や雨戸につかわれるトタンや、基礎部分につかわれる石、土壁につかわれる土や竹、葦(よし)などが挙げられます。ほかにも、電球の傘やドアノブといった金具類、窓につかわれるガラスも古材なのです。

古材ってどうやって手に入れるの?

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解体現場からもらってきたトタン。少々よれていても、玄能(かなづち)で叩けばまたつかえる

さて、そうした古材ですが、最近では長野県諏訪市に建材のリサイクルショップ「リビルディングセンター」がオープンしたり、捨てられてしまう建材を譲る、もらう廃材ネットワーク「建材あるもんで」といった仕組みも始まりました。

ネット販売もされている古材ですが、民家の解体現場からもらってくるという方法もあると徳永さんは言います。

解体現場で作業をしている人に声を掛けるのは勇気が必要ですし、基本的には仕事の邪魔をすることになってしまうのですが、どうしても必要であることを伝えれば、その熱意を汲み取ってもらえることもあります。解体作業は12時の昼休憩のほか、おおよそ10時と15時に15分ずつ休憩があるので、10時の休憩の時間に合わせて足を運んで交渉して、12時か15時の休憩の際に作業人数分のコーヒーなどを持って、もらいに行ったりします。(徳永さん)

ほとんどのケースでは自分で材料をはずすことになるので、そのための道具を持っていくこと、何が欲しいのか明確にしておくことも大切。また、家主が保管しておきたい材料や、先にはずしてしまうと解体の工程で困ってしまうこともあるので、現場の責任者への確認が必要です。

さらに、自分が古材をとったあとが汚く残らないようにしたり、ついでにこれも持っていって、と使う予定のないものも持っていくよう言われた場合は、受け取って別の人に譲るなど、いずれにしても、気持ちのいいコミュニケーションが必要になりそうです。

古材をつかうメリット、デメリットって?

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古民家のリノベーション。向かって正面の玄関裏は松、靴箱は蔵板(お蔵の外壁の板)、靴箱の上は錆トタン、引き戸は松(写真:砺波周平)

それでは、古材をつかうメリット、デメリットを挙げてみましょう。

古材をつかうメリット
・経年変化の風合いがある
・新材よりも強度がある
・環境にやさしい

古材をつかうデメリット
・一度にたくさん同じ古材が揃わないことが多い
・古材を購入する場合は、コストがかかる
・古材をもらってくる場合は、手間がかかる

古材は、選別して水洗いし、乾燥させて、釘を抜くなど手直ししてから研磨して…と、再利用のできる状態にするまでに手間がかかります。そのため、購入する場合は、人件費はもちろん、保管費や運搬費などがかさむのです。

たとえば古材の板を並べて使う場合、場合によっては切り込み部分を埋めたり、釘あとをきれいにしたりといった作業が必要になることも。さらに、反っていたりよれていたりするので、並べる際にぴたりと収まらないことが多々あります。その古材の癖を見抜いて、一枚一枚、その古材に合わせた加工をする手間も必要になります。(徳永さん)

さらには、民家一軒分の古材をまるまる譲り受けるようなことがない限り、家を新築する際にすべて同じ古材でまかなうのは難しそうです。ひとくちに古材といっても、年数や気候条件で風合いや癖が異なるので、たとえば同じ杉の板でも、幅や長さが揃わないのはもちろん、まったく異なる素材に見えてしまいます。

そして、古材とその古材の再利用に精通した大工がいなくなってきているのも事実。たとえ古材が揃ったとしても、その古材をつかって家を建ててくれる職人を見つけるのは難しいかもしれません。

古材をつかうと、少々古くなってきた木材にぴたりと馴染む材を選ぶことができます。新材をわざわざエイジング加工するよりも、手間がかからないうえ自然に見える。結局、どの手間を選ぶか、という違いだけで、メリットとデメリットは相殺されるということなのかもしれません。(徳永さん)

古材にしかない味わいは代えがたいもの。古材をつかったリノベーションをDIYで手掛けてみるなど、捨ててしまうのではなく、あるものを生かす作業には楽しさもあり、そうした暮らしには豊かさもあると言えそうです。

いかがでしたでしょうか。

ちなみに徳永さんによると、古民家の屋根裏には、いい古材が眠っていることが多いのだとか。先代の家主が何かに使おうと大切に保管したまま、次の世代は知らないまま暮らしていた、ということも少なくないそうです。雨に濡れず、生活スペースを邪魔しない広いスペース…となると、屋根裏になるのでしょうか。これは、木材というものがいかに貴重品であったかが分かるエピソードです。

また、解体現場に足を運ぶと、この木材はもともとどこで、何に使われていたかなど、その建物のルーツを聞くことになると話していたのも印象に残りました。多数の解体現場に足を運んで聞いた話から類推すると、今から70年〜80年ほど前までは、民家の解体があると聞きつければ、欲しい人が持ち帰り、その木材をつかって家を建てていたことになるのだとか。

木が育つのに100年、古民家で100年、そして再利用すればさらに100年…。

古いものを大切にすること、あるものを生かしきること、そうした暮らしの豊かさなど、古材を通して、いろいろなことが学ぶことができそうです。

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