南北に長い17坪の狭小敷地に計画した分譲建売住宅は、JRの駅に近く、現在空き地である隣地も将来的に建物が建つ可能性があると感じた。唯一確実に状況が変わらない南側の道路を頼りに設計を進めた。通常狭小地と呼ばれる住宅は床面積を最大限に取るために、最大建築面積いっぱいに配置し、それを層で積み上げる。だが、それだけでは窮屈さを感じるのではないかと考えた。そこで、南側からの光や風を全体に行き渡らせるために、建築面積の1/5を割いて1階からロフト天井まで貫く吹抜けを設けた。吹抜けは光や風だけでなく、上下階を縦断するコミュニケーションを生み出し、視線の交錯、上下間で会話をするたびにこの住宅の拡がりを感じるのではないかと思う。分譲建売住宅は実際に建っている住宅を見て購入できる点が特徴であり、一般的には万人に受け入れられる住宅が売れることが重視される。しかし、これによって住宅がマーケット向けに作られる傾向があり、部屋数や広さなどの数字に価値が集中する。そうではなく、敷地のポテンシャルを考慮し、住宅に寝食以上の価値を与え、1つの家族でも満足できる住宅を提供することが建築家が分譲建売住宅を設計する意義だと考えた。
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